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2008/04/30

Made in Japan

Blog1

 

某コレクションの1つである1800年ごろのナイフ・アーン
(Knife Urn)。アーンは日本語で飾り壷の事。一番上の
フィニアル(Finial)部を持って、引き上げると中に、ナイフが
収納されている。イギリスでは18世紀後半に流行した形で
サイドボード(Sideboard)、その両脇にペデストール(Pedestal)
が置かれ、その上にこのアーンが載るというのが、
ロバート・アダムの時代に流行りだしたダイニングルームの
スイート(Suite)である。

 

もちろんイギリスで流行った物は、その頃の流行に則り
マホガニー製。(下の写真参照)上の物は、ヒノキの躯体に
黒の漆、青貝の装飾の日本製である。

 

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しかし、2つを較べる限り、全くの同じデザイン、漆塗りの
物はどこで、どうやって作られたのかと言う事になる。

 

当時の日本は鎖国中。長崎の出島が唯一の貿易を
許されたオランダ人が入国できる所。しかし、その貿易を主に
取り仕切っていた東インド会社は、フランス革命の余波で
受けた本国のフランス革命軍による占領によって解散に
追い込まれていた。オランダの管轄領であったバタヴィア
(現インドネシアの1つ)は何とかして日蘭貿易を続行させようと
するが、オランダ本国からの船は途絶えてしまった為、
それも苦難。そこで目を付けたのが独立戦争が一段落した
アメリカの船、これをチャーターして長崎に向かわせた。

 

そのうちの1隻が、マーガレット号で、その船長である
サミュエル・ダービィが買い付けたナイフ・アーンがアメリカ・
マサチューセッツのピーボディ・エセックス博物館に
残っている。これが、また上の黒漆塗りのナイフ・アーンと
瓜二つであることから、このアーンもマーガレット号の荷物の
1つであった可能性も考えられる。

 

積荷の漆器は船が4ヶ月停泊している間に、発注されて、
製作されたらしい。さて、誰が作ったかということだが、ヒノキ製
である事から、日本で作られた事は間違いない。

 

あるオランダの事務官の日記に寄れば、西洋のデザイン
の物を作らせる場合、細かい所まで精細に注文をつけないと、
自分(和風)の感覚で勝手に解釈してしまい、物が台無しに
なってしまうと、愚痴っているので、本物の(恐らく)マホガニー
製のナイフ・アーンを持ってきて、これと同じデザインの物を
作れと発注したに違いない。

 

この数年前にフランクリン号が同じよな、アーンを22個発注
している記録がある、マーガレット号も同じように発注したと
すると50個あまりの似たような日本製のナイフ・アーンが世界
に存在している事になる。

 

こういう事例がもっと研究されると、かなり興味深いのだが、
発注先が京都・笹屋、綿屋と言う所で、止まっている様だ。
ただ、4ヶ月で22個のアーンを作ってしまう辺り、かなり多くの
職人を抱えていた、組織的な店だったに違いない。

 

 

 

参考文献:神戸市立博物館研究紀要第19号

 

 

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