Study Tour
スタディ・ツアー
スタディ・ツアー(自分で勝手に命名しただけだが)で1日ロンドンを
廻ってきた。
①ヴィクトリアン・アンド・アルバート博物館
俗にV&Aと呼ばれるこの博物館。大英博物館の民俗学的な物の
コレクションと違って、工芸に関する物を集めた博物館である。
コレクションは多岐に及ぶ。家具、陶磁器、ガラス、衣装、彫刻、
銀器、はては建築や内装デザインまで、ありとあらゆる人間に
よる工作品が展示されている。
今回の目的は、会期の終了が迫った「Thomas Hope Regency
Designer」(トーマス・ホープ)のエキシビジョン。行くまでは漠然と
しか知らなかったホープ像が見えてくる。
彼はオランダ生まれのオランダ国籍(オランダ人?)で、銀行を持つ
ファミリーに生まれ裕福であった。ちょうど大学の年の頃、アジア、
アフリカ、ヨーロッパを回る旅に出る。18世紀の後半に良家の
子弟がイタリアやフランスに見識を広める為に行かされた
グランド・ツアーの様な物である。その後、フランスがオランダを
占領したのを期にロンドンへ移住する。
そこで、自分でインテリアをデザインし、オープンハウスのような事
をしている。1807年には「Household Furniture and Interior
Decoration」を発行。ローマ時代や古代エジプトから取った
モチーフやデザインは当時のインテリの世界に一石を投じる物と
なった。
②グロブナー・ハウス・アート・アンド・アンティーク・フェアー
イギリスに来て以来、取り合えず毎年欠かさず行っている物の
1つである。しかし、ここ数年で大きく様変わりした。昔は大きく羽振り
を効かせていたアンティーク家具ディーラーは年々押され気味の
ように見える。増えているのは、中国物やロシア物、
モダン・コンテンポラリー物だったりするのは、現在のアート・
マーケットを繁栄しているからか?
アンティーク家具ディーラーも家具だけではなく、モダンな絵画や
家具などを組み合わせて生き残りを図っているように見える。
あるアンティーク家具ディーラーの不祥事
(デジタル複製の功罪 番外編参照)が、最近あったせいなの
かもしれない。
③クリスティーズ キング・ストリート
オークション・ハウス2強のうちの1つである。ちょっと前までは
サザビーズ、ボナム、フィリップスを含め4強だったのだが、
オーナー権の変更等により、現在は完全にクリスティーズ、
サザビーズの独占のようである。ここ最近の数々の最高落札額
の更新は記憶に新しい。
ここでは来週、オークションにかけられるもの下見会(Viewing)が
行われている。無料で、誰でも入ることが出来、挙句に触って
質感を感じてみたり、引き出しを開けてみる事だって出来てしまう。
今回はV&Aにも1脚所蔵されているロバート・アダムデザイン、
トーマス・チッペンデール製作の俗にダンダス・チェアーと
呼ばれるセットから、2脚のアームチェアとセティがオークション
にかけられるからである。
博物館でフェンス越しにしか見ることが出来ない物を、直に
見れてしまうのがオークションの良い所。美術館・博物館だって
オークションから買うのである。
そうそのダンダス・チェアー。よく出来た椅子である。古典意匠
であるアンセミオン(Anthemion、ハニーサックル、スイカズラとも
呼ぶ)を背もたれの一番上、前足のひざ(Knee)の部分に掲げて
いる。オイル・ギルディングの下地は黄色いボール(Bole)、古艶
と言うよりは、新しくギルディングしなおされ、わざと汚れさせた
印象を受けた。250年ほど前の椅子である。どんなに大事に
使っても、それなりにくたびれるはずである。そういう意味では
綺麗過ぎると言う感じであった。
« Grosvenor House Fair | トップページ | Upholsterer's Trap »
コメント