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2008/09/14

Ebony and Ivory 続き

黒檀と象牙、続き

この椅子、構造的な所は、しっかりしていて、直す所はなかったの
だが、後ろ脚から背ずりに続く一番上の象牙製のフィニアル
(Finial ベッドポストやランプポストなどの先端部の装飾、英辞郎
より)、背ずりにある12個のもっと小さなフィニアルのうち2つ、そして
黒檀製のねじりん棒(Barley Twist Turning)の一つが無くなっていた。

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上は、その小さなフィニアル。最初は象牙の模造の物で引いて
みたのだが、まんまと粉砕。適度な硬さと柔軟さを持つ、自然界
の物には、やはり敵わないらしい。左の二つが新しい物。直径
は10mmきっていて、本当に気を遣う引き物。

長くこの仕事をしているが、象牙を引くなんて機会は滅多に無い。
黒檀でねじりん棒を作るのも然り。せいぜい12cmほどの小さな
もの、これは引くというよりは、削りだすに近い。もともとは
17世紀後半に流行ったこの意匠。この時代にどのようなジグを
使っていたのかは定かではない、が、基本的には罫書き、鋸で
切れ目をいれ、鑿で削り、やすりで仕上げる。

19世紀以降のリヴァイバルの時には、ねじりん棒の機械が出来
ていたので、かなり大量生産で廉価版の椅子が作られた。大概
はオーク製の真っ黒で、籐編み、もしくは板の座面、彫刻で
こてこての椅子。あまりオリジナルの椅子とは似ても似つかない
が(17世紀のオリジナルは多くはウォルナット製のため虫食い
が多く、あまり残っていない)市場でよく見る椅子。

普段、あまり使わない素材を使った修復は、楽しいとともに、緊張
するものである。失敗すると予備の材がない。一発勝負のドキドキ。
しかし、時間は限られている。そんな仕事をした後は、意外に
ぐったり疲れるものであったりする。


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