水は敵?
水は敵?
一般にアンティーク家具に水は大敵である。
最近の家具のようにウレタン塗装してあるわけでもないので、
家具の表面に飛来した水は、ワックスの塗膜を食い破り、
その下のポリッシュ、又はヴァーニッシュの塗膜に浸透し
木材の表面に辿り着く。
水は化学的にもずば抜けて安定した物質である。酸素と水素の
化学結合が強いが故に、蒸発は他のシンナーなどに比べると
著しく遅い。しかし、匂いもせず、毒性もなく、扱い易いため、
クリーニング(洗浄)作業の一番手に使われることが多い。温めて
使えば一層効果的で、埃汚れや手垢汚れは研磨をせずに
綺麗にしてしまう。
水により、ダメージを受けたオランダ製のマルケトリー・カード・
テーブルの天板。化学的には水はポリッシュやヴァーニッシュを
直接溶かすと言うことは短時間にはない。しかし、自由自在に
動ける水が、ゆっくり浸透し、塗膜層の下に入り込む。それにより
木は膨らみ、膠もゆっくり溶けてゆく。木材の収縮により塗膜面
との接着も不安定になりさらに多くの水が浸透していく。良く見る
白濁した痕は湿気が塗膜と木材の間に捕えられることから
起きる現象である。
それが室内の暖房などにより急激に乾燥などすると、案の定、
上の写真のようにひび割れとして天板上に現れる。こうして家具
は朽ちていくのだが、大概の場合は所有者なりが何かしら手を
打つに違いない。
こうして、家具達は修復工房にやって来るのである。
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