Pugin
A. W. N. Pugin
(Augustus Welby Northmore Pugin 1812-1852)
オーガスタス・ウェルビー・ノースモア・ピュージン
18世紀の後半から、簡単に言うと、うねうねしたロココ意匠の
軽々しさと言うか、軽薄さに飽き飽きした人々が、原点回帰と
して、ゴシックを本質的な美としてとらえる運動が、俗にいう
ゴシック・リヴァイヴァルの始まった。。
フランスからの移民の子であるオーガスタスはドラフトマン
(製図工)の父の影響もあり、装飾家、そして建築家へと歩んで
いく。カソリックに改宗した彼は、深くゴシック・スタイルに傾倒し
建物だけでなく、インクスタンドや帽子掛けなどの、小物家具や
照明器具までもをデザインするようになる。
ビック・ベン(Big Ben)で有名なイギリスの国会議事堂。1834年に
火災により大半を焼失した後、1836年の公募により
チャールズ・バリー卿の現国会議事堂の原案を採択し竣工される。
オーガスタスはバリー卿に乞われ、そのデザインを手伝うことに
なる。
このプロジェクトで彼が書いた図案は2000枚に及ぶと言われる。
ゴシックをモチーフにした無垢のオークの家具は今も、
国会議事堂で使われている。
上はオーガスタスがデザインしたサイド・テーブルを横から見た物。
簡潔な、すっきりとしたデザインは教会の長椅子(Pew ピュー)を
想像させる。もともとはオーガスタスと親交のあった2つの会社
クレイス(J. C. Crace)とホランド・アンド・サンズ(Holland and sons)
が家具の制作を担当したが、その後ギロー(Gillow)も加わる。
このテーブルはギロー製で、"GILLOW"とシンプルなヴィクトリア期
中期に見られるスタンプが、天板下のフレーム、下側に押してある。
もちろんオーク製、この頃流行りのワックスのみで、仕上げられ
ている。ヴィクトリア期後期になるとこの手の物は何でも、一般
のゴシックのイメージの真黒に着色されてしまう。大概は
まっすぐ通った柾目が材として使われるので、木目の面白さ
こそあまりないが、しっかりした落ち着きを感じさせる。
面白いことに、国会議事堂で使われる家具は、未だオーガスタス
のデザインした意匠で作られる(恐らく作られなければいけない)。
だから、同じ意匠の家具でもヴィクトリア時代に作られたものから、
現在の物まである訳で、なんだかイギリス人の不思議なこだわり
を感じてしまう。
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