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2008/12/06

彫る

Carving

修復と言う作業において、ときには彫刻をしなければいけない
時がある。彫刻と言う作業、ゼロから木を彫っていく場合と
欠損した部分を補って彫る場合、かなり違うのではないかと思う。

一つ曲線を彫るのにその曲線にあった彫刻ノミを持っていない
と作業はえらく手間のかかったものになる。弓型になったゴージ
(Gouge)と呼ばれる、彫刻ノミ一つとっても、数十種類と言う
サイズ、違った曲線が存在する。正しいサイズでないと、他の所
を傷つけたり、オリジナルのように深く彫れなかったりするから
厄介だ。

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上は、ヴィクトリアの時代に作られたオーク製の椅子の背ずりの
一番上の所に付いているライオンの顔の彫刻。想像の通り、
背ずりの一番上、一番人が触りやすい所故に、顔の半分ほどが
欠損していた。目の詰まった、マホガニー等だったらもう少し
楽なのだが、オーク材、いったて硬い。とはいっても黒檀や
ローズウッド程ではないので、そう頻繁にノミを砥ぐことはない
が、目が粗いが故に、逆目に無理に彫るとすぐに割れてしまう
(欠けてしまう)。

木工の世界でよく言われる、"measure twice, cut once"。一度
計っても、もう一度切る前に確認してみろという意味合いだが、
まさしくその通りで、彫刻は引き算である。もちろん、削り出し
過ぎてしまった場合、糊を使って付け足すことは可能であるが、
やはりプロである以上それは避けたい。さらに接合部を増やす
という事は、見た目をさらに不自然にすると言う事に繋がる。

それ故に、慎重に彫るのだが、慎重になり過ぎると、仕事が
遅々として進まない。これがカーバー(Carver)と呼ばれる彫刻師
との違いであろう。仕上がりこそそんなに違いがないが、かかる
時間が圧倒的に違う。しかし、彫刻を終えた後の、充実感は
やったものでなければ分からない。それと同時に。ものすごい
集中力を要するのでぐったり疲れるのだが、、、。

これがプロの仕事→HP

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コメント

文面最後のプロの仕事HPを見ました。クロちゃんのお店パティナのことも知りました。とても素晴らしい活動をしていらっしゃる方ですね。
完成品の価格を見て、やはりこういう価格になるものかと、がっかりすると共に、へんちくりんでも自分で作る(修理)するのが一番とも改めて感じるに至りました。

イギリス人も結構自分でしたがりです。DIY何かでも、やって余計酷くなったなんてのは日常茶飯事。アンティークのマーケットがしっかりしているこちらでは、あまりへんちくりんし過ぎると価値が下がることもあります(笑)。

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