彫る
Carving
修復と言う作業において、ときには彫刻をしなければいけない
時がある。彫刻と言う作業、ゼロから木を彫っていく場合と
欠損した部分を補って彫る場合、かなり違うのではないかと思う。
一つ曲線を彫るのにその曲線にあった彫刻ノミを持っていない
と作業はえらく手間のかかったものになる。弓型になったゴージ
(Gouge)と呼ばれる、彫刻ノミ一つとっても、数十種類と言う
サイズ、違った曲線が存在する。正しいサイズでないと、他の所
を傷つけたり、オリジナルのように深く彫れなかったりするから
厄介だ。
上は、ヴィクトリアの時代に作られたオーク製の椅子の背ずりの
一番上の所に付いているライオンの顔の彫刻。想像の通り、
背ずりの一番上、一番人が触りやすい所故に、顔の半分ほどが
欠損していた。目の詰まった、マホガニー等だったらもう少し
楽なのだが、オーク材、いったて硬い。とはいっても黒檀や
ローズウッド程ではないので、そう頻繁にノミを砥ぐことはない
が、目が粗いが故に、逆目に無理に彫るとすぐに割れてしまう
(欠けてしまう)。
木工の世界でよく言われる、"measure twice, cut once"。一度
計っても、もう一度切る前に確認してみろという意味合いだが、
まさしくその通りで、彫刻は引き算である。もちろん、削り出し
過ぎてしまった場合、糊を使って付け足すことは可能であるが、
やはりプロである以上それは避けたい。さらに接合部を増やす
という事は、見た目をさらに不自然にすると言う事に繋がる。
それ故に、慎重に彫るのだが、慎重になり過ぎると、仕事が
遅々として進まない。これがカーバー(Carver)と呼ばれる彫刻師
との違いであろう。仕上がりこそそんなに違いがないが、かかる
時間が圧倒的に違う。しかし、彫刻を終えた後の、充実感は
やったものでなければ分からない。それと同時に。ものすごい
集中力を要するのでぐったり疲れるのだが、、、。
これがプロの仕事→HP
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文面最後のプロの仕事HPを見ました。クロちゃんのお店パティナのことも知りました。とても素晴らしい活動をしていらっしゃる方ですね。
完成品の価格を見て、やはりこういう価格になるものかと、がっかりすると共に、へんちくりんでも自分で作る(修理)するのが一番とも改めて感じるに至りました。
投稿: amsuzu | 2008/12/07 01:08
イギリス人も結構自分でしたがりです。DIY何かでも、やって余計酷くなったなんてのは日常茶飯事。アンティークのマーケットがしっかりしているこちらでは、あまりへんちくりんし過ぎると価値が下がることもあります(笑)。
投稿: quilastudio | 2008/12/10 20:38