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2009/03/05

[VICTORIAN FURNITURE」

Blog2

「VICTORIAN FURNITURE」

ヴィクトリアン・ファニチャーと言う本。すでに何冊も同じタイトル
の本がある在り来たりなタイトル。しかし、副題に「Technology &
Deisgn」と付いている。中を見れば、写真はほとんど無し。家具史
の本ではこれはかなり珍しい部類に入る。

大概、家具史の本と言うものは、家具のデザイン主導で、デザイン
の移り変わりを中心に書かれている。それ故に写真を見せること
によって、デザインの移り変わりを提示する。そもそも、流行と
言うものは19世紀半ばまでは、製作者側によって作られてきた物
にすぎない。消費者(大衆)が流行に本格的に参加するのは
20世紀に入ってからである。

1851年以降の世界博覧会を機に(フランスではこれより少し
早かったが)、物を展示して販売するというスタイルが確立され
てきた。日本でも、勧工場と呼ばれるところで展示即売が
行われた。それ以前、家具を買いたい場合は、わざわざ家具
職人(デザイナー、作家)の所に行き発注をしなければ家具が
手に入らなかった。

ヴィクトリアン時代は産業革命の時代。様々な、蒸気によって動く
機械が発明され、実用化された。バンド・ソー(Band Saw)やベニア・
カッター(Veneer Cutter)、彫刻を彫る機械など。しかし、機械化
により多くの人々の仕事が失われたかと言うと、「No」で、むしろ
19世紀末に向かって、家具産業に従事する人は増えている
のである。

人は、きちっとしたメリットや利益が約束されない限り、今の
やり方を変えて、わざわざ高いものを買うことしない。著者の
エドワーズ氏が注目したのがまさにそれで、産業革命による
機械化がいかに家具業界に影響を及ぼしたのかと言う事である。

ヴィクトリアの時代は、家具史上折衷の時代としてとらえられて
いる。過去のスタイルがリヴァイヴァルとしてヴィクトリア時代を
彩るからである。しかし、このリヴァイヴァルは、消費者主導の
物? もしくは製作者側の機械化によって、より簡単に、もしくは
より廉価に出来るようになったからなのか?

色々な意味で、大きな変化のあったこの時代に、家具産業が
いかに対応したかが良くわかる本です。一見、矛盾している
かにも見える事柄が、同時に存在した時代。大衆の購買力の
増加。手作業から機械への緩やかな移行。新しい素材。
個人的には目から鱗だった、と言うエピソードも多くありました。
確かに専門性が高い本ではありますが、普通の人でも意外に
面白いはずです。

VICTORIAN FURNITURE
-Technology & Design-
Clive D. Edwards
Manchester University Press
1993
ISBN 0 7190 3783 2

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