"Seaweed" Marquetry
「海藻(?)」マルケトリー
海藻マルケトリーと呼ぶと変だが、シィ‐ウィード・マルケトリーと
呼ばれる装飾がある。その昔は、アラベスク(Arabesque)模様
とも読んでいたが、シィ‐ウィードと呼ばれる方が多いようだ。
ロングケース・クロック(Longcase Clock)と呼ばれる2m以上ある、
背の高い時計の振子の部分の扉になっている表面の装飾。
長い年月で退色してしまっているが、濃い目の所がウォルナット
(Walnut)、薄い所が西洋ヒイラギ(Holly、一般には。でもシカモア・
メープルかも知れない??)。デザインは海藻と言うよりは植物的
と言った方が正しいかもしれない。
そもそも、この装飾が流行した背景には、時のチャールズ2世
(Charles II 1630-1685)がポルトガルからの王女を娶ったことに
起因すると思われる。このキャサリン・オブ・ブラガンザ
(Catherine of Braganza)は、イギリスの上流階級へ、今は
伝統的である、お茶を飲む習慣を持ち込んだ人として有名であ
る。
そして、ポルトガルのあるイベリア半島はかつてムーア人に
支配され、文化、建築等に、強くイスラムの影響が残る所で
ある。17世紀の終わりから、18世紀の頭のほんの少しの間に
流行したこの装飾。そのイスラムの影響が強く残るポルトガル
から来た王女が何らかの物を持ち込んだとしても不思議では
ない。ちなみに、彼女の名前が残る"ブラガンザ"脚
(スパニッシュ脚とも呼ばれる)と呼ばれる意匠がある。
一番上の写真の真ん中、右左に走る接合線が走るのが見える。
下地はオークの材。その上にシィ‐ウィードの意匠がカットされた
ウォルナット、西洋ヒイラギの薄板(べニア)が膠で張り付けられ
ている。その意匠をカットするのに最低でも6枚のべニアが同時
にフレット・ソー(Fret Sawと呼ばれる糸のこ)でカットされている。
上半分のパネル用にウォルナットと西洋ヒイラギのべニア一枚
づつ。下半分用にもう1セット、プラス捨てベニアと呼ばれる物が
上と下に一枚づつ。その6枚が膠で接着され、シィ‐ウィードの
意匠が描かれ、しこしことカットされる。捨てベニアは切られた
部分の毛羽立ちを防ぐための物。切られた後、西洋ヒイラギの
バックグラウンドにウォルナットのシィ‐ウィード模様を嵌め込む。
一つを裏返して上下で接合すれば、写真のようなパネルが
出来上がる。
逆パターンはないので、ウォルナットのバックグラウンドに、
西洋ヒイラギのシィ‐ウィード模様は捨てられてしまうのかなと
思ってしまう。その当時のべニアは1分の16インチぐらいと
言われる。約1.5ミリ強、×6枚。1cm近い板を糸のこで切って
いくことになる。それも、今のように目の細かい糸のこの刃で
はなく粗い奴。かなりの労力だったに違いない。




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