Assembling a chair
椅子を組み上げる
椅子を組み上げている。
調度頃合いにぐらぐらな椅子。これが、(私が思うに)昔の椅子
の良い所で、膠を糊に使ったホゾグミの構造。材の収縮や膠の
劣化などの理由により接合が緩む。そういう衝撃には膠は
潔くパキッって外れ椅子自体にガタが出てくる。まだしばらくは
座れるが、もうそろそろメンテに出したらっていう椅子からの
サインだったりする。
ヴィクトリアの時代に使われ始めた、ダボの構造。部材は短くて
済むし、ほぞ穴あけるのに鑿なんていらない。ドリルがあればOK
で、時間も節約。良いことずくめのように聞こえるが、その
皺寄せは構造自体に行ってしまう。
丸いダボは、どの方向に対しても強い接着力を発揮する。面が
はっきりしているほぞに比べて、どの方向(縦、もしくは横)に
ガタが来ても、膠はパキッとは外れない。尚且つ、部材が
小口同士でしか接し合っていないため外れやすく、ダボが
その接合部にかかるテンションを一挙に引き受ける羽目に
なる。その挙句ダボが折れる。
部材がダボでしか接合されていないため、材の捻じれ等も
抑え込むことが出来ない。
以前何かの雑誌で、ベントウッドを直せれば、どんな椅子でも
直せるといコメントが載っていて、「おいおい。」と思った記憶が
あるが、それぐらい椅子は難しい。逆にいえば、椅子がきっちっ
と直せればどんな家具でも直せるのではなかろうか。
ばらした椅子は意外にパーツ数が多いものである。上の
1800年前後の椅子。材は樺か桜(いまいちはっきりしない)。
フロント・ゲートと呼ばれる、前側で3つ(両前足、座面枠前)。
バック・ゲートで13(両後足、貫後側、座面枠後、笠木、8本の
背棒)。それに両座面枠横側、両貫横側、中央の貫の21点もの
パーツが一つの椅子を構成している。
これだけの物を、一挙に組み上げるにはちょっと無理がある。
大概は仮組をしてどのようにハタガネをかけるかまでも
シュミレーションをしてみる。そして、まずはバック・ゲートを
組み上げ、フロント・ゲート、そして最後に椅子の形へ。それでも
上手く入らなかったりすることはあって、時には全部
またやり直しなんてこともあり得る。椅子は難しいのである。
多分、「家具修復は椅子に始まり、椅子に終わる」なんて言葉が
有るかもしれない。
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