« The end of Furniture Restoration?? | トップページ | 「日本の国宝、最初はこんな色だった」 »

2009/10/10

「うるしの話」

Blog5

えっ、家具修復と漆と思うかもしれない、が、意外に西洋家具史
に出てくるのである。ポルトガル人が鉄砲を伝えた種子島への
到着から、南蛮貿易が始まり、鎖国になるまでの間、そして
オランダとの出島を通した貿易、開国してからの西洋文化の
流入と日本文化の流失、アール・デコの時代にも漆を使って
装飾されたものが多く存在する。そういう形で、多くの漆芸品が
海外に存在する。

本来漆は私の専門ではないが、今でこそ、ジャパン・マネーが
少し下がり気味なので、アジア美術の中では中国物にトップを
譲った感じだが、年に数回オークションが開かれ、多くの物が
売買されている。そう言う絡みで、もう少し知らねばと手に取った
一冊であった。

著者の故松田権六氏は明治生まれ。丁度国策としての日本の
工芸品の輸出の頃から、アール・デコへの流れ、そして戦後の
発展と昭和の終わりまでを漆を通して見てきた人である。うるし
の神様とも呼ばれ、出身地の金沢の漆産業を盛り上げる事に
尽力を尽くしてきた。

この本の初版は1964年。驚くべきことに40年以上前に書かれた
の本である。それなのに中身は全く古さを感じさせない。特に
工芸における良い本はいつもそうであるが、もう完成された本が
すでに出版され、残念ながら絶版になるという、良くあるパターン
なのである。その中で、この本は版を重ね、いまだに読み続け
られているという事は、そのジャンルにおいて最高の参考書の
1つであることを意味する。すなわち、それは故松田氏の文中の
言が、真理を突いているからに他ならない。氏は、古典を良く
研究せよという。

今では、ありとあらゆる町に美術館、博物館が乱立し、書籍でも
手に入る、さらにインターネットの普及は、世界の名品までも
自由に見て回れる時代である。参考品には不足しないはず
である。しかし、悲しいかな、恵まれすぎた者は、有難味を失い、
粗雑な見方しかできなくなってしまったのではないかと問う。
自分自身、家具修復士として、今まで触った家具を全て
覚えているかと、問われると間違いなく回答に窮するに違いない。

「日本人は裸眼で物を見る前に、レンズを通して眺める。」
日本人の海外での写真撮るの好きなのを皮肉った言葉である
が、写真を撮ったことで安堵している自分になってはいけないと、
時々、この本を読んで自分自身を戒めなければいけないと
思った。

「うるしの話」
松田権六著
1964(初版) 岩波文庫
ISBN 4-00-335671-3

« The end of Furniture Restoration?? | トップページ | 「日本の国宝、最初はこんな色だった」 »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「うるしの話」:

« The end of Furniture Restoration?? | トップページ | 「日本の国宝、最初はこんな色だった」 »

フォト

instagram

2024年3月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            
無料ブログはココログ