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2013/11/03

電気が無い

Can you imagine a life without electricity??

先週、強風の吹き荒れたイギリス。

多くの木がなぎ倒され、20万世帯が停電。
うちの工房もその一つであった。

晴れれば、室内は明るい。

普通の暖房は使えない。

普段流れるラジオもない。
家具の制作工房と違い、そんなに多くの器械類はないが、それが
ない為に、普段のペースでは働くことが出来ない。

響くのは、鋸を挽く音。玄能を叩く音。

伝統的であるといわれる修復工房でさえ、時代の流れには
逆らえない。

18世紀、ジョージアンの時代にはキャビネット・メーカーと呼ばれる
家具職人は朝の6時から、夜の6時まで働いたという。

夏場はいいものの、冬、朝の6時は真っ暗、夜の6時も真っ暗。
大概、作業するベンチは窓際に作られているので、日さえ登れば
光は入る、が、細かいところの光源にするのは弱いのではないか
と思ってしまう。昔の人の方が眼が良かったのか??

Dscf1907

リーズ市が管理する、テンプル・ニューサムというカントリーハウス
が発行した一連のカントリーハウス研究シリーズに
「カントリー・ハウス・ライティング」がある。

中世以降のライティングと言えば蝋燭。

今の原油がベースの物と違い、タローと呼ばれる獣脂や、鯨脂、
蜜蝋等から作られる蝋燭。芯を持ち、溶かされた蝋に入れ、外に
出し、乾かす。その繰り返しでだんだん太くしていく。

Victorian_oak_coffer_as288a320s3

17世紀のオークの時代のコファーには、蓋を開けると、蝋燭を
しまう箱がある。18世紀の初めに蝋燭に税金が掛け始められる
ようにかなり貴重品であったようだ。

大邸宅にあっても、ダイニングルームに下げられる何十本も蝋燭を
使うシャンデリアに全部火を灯すことなど稀で、室内は絶えず
かなり暗かっと言う事が想像にたやすい。

19世紀になるとガスランプの普及により、安定した光源が室内を
照らす。

Dscf1908

どの大邸宅にも、ランプルームと言う部屋があり、鉛張りの
テーブルの上でオイルを入れたり、シェイドの煤取りなどの作業を
する部屋が存在した。

電気が普通に普及するのは20世紀以降だが、その俗に言う
アンティークが産みだされたのは電気普及前の時代。効率を
求めるのは世の常であろうが、今の効率至上主義とは違う
時間が流れていたに違いない。

一つの家具を作るのに一年以上の時間をかけるというと、
とんでもない感じはするが、それが普通だった頃。

良い仕事を追及するには、時間をかけねばならない。しかし、
それでは職業としてはやっていけなくなる。はたして修復は
どこへ向かっていくのか??

ふと停電の暗い工房でそんなことを考えていた。








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