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2013/12/22

猿回しのサルのテーブル

A table held with 3 monkeys in padded sleeveless kimono jackets

 

Monkeytablechatsworth1

 

 

 

一瞬、これ何だというクエスチョン・マークが頭をよぎる。

 

しかし、良く見てみると、テーブルなのに気付く。

 

三匹の猿回しのサルがテーブルを支えている。天板は螺鈿細工
が施されていて、蓮の葉か扇を三枚組み合わせた形をしている。

 

ほぼ間違いなく、京都-長崎スタイルと呼ばれる日本の輸出漆器。

Table_top_2

 

 



1851年のロンドンで開催された万国博覧会でデボンシャー卿が
購入し、つい先頃まで、卿の代々の住居であるダービシャーに

 

あるチャッツワース・ハウスに現存していた。

こういう、18世紀後半、19世紀前半頃のヨーロッパのデザインを
持つ日本の輸出漆器はそう多くは現存しない。流行の変化か、
アメリカ独立、フランス革命等のバタバタによる西欧の混乱に
よるものかは定かではない。

ただ、日本の長崎歴史文化博物館に所蔵される1856年に編纂
された「青貝蒔繪雛形扣浅田記」には多くの西洋スタイルの
家具デザインが掲載されている。何からこのデザインを起こし
てきたかは不明だが海外からのまだ需要があった事を伺わ
せる。

Asadaki

 

 



「浅田記」によるデザインの一つ。脚は蝙蝠。天板は梅型と

 

扇が三つの2つが掲載されている。実際、1854年に発行された
「イラストレイテッド・ロンドン・ニュース」にはこの蝙蝠足の
テーブルが展示されていた挿絵が掲載されている。

万国博覧会のあった1851年、日本は丁度幕末で混沌とした時代。
国(幕府)として、参加したその後の博覧会と違い、そんな余裕が
あったとは思えない。1867年に出展した薩摩藩、鍋島藩も同様。

 

よって、日本から直接、このテーブルが博覧会に持ってこられた
と言う事は考えられない。

では、1851年に購入されたこのテーブルを誰が、万国博覧会に
出展したのか疑問に残る。

公式の出展者カタログには、Japanの字はないが、Chinaは存在
する。1840年のアヘン戦争で香港を取られた清が、国として参加
したとも考えられない。出展者をよく見ると、全て個人や業者が
持ち寄ったもののように見受けられる。やはりそこそこの需要は
まだまだあったと思われる。その中には、螺鈿細工のテーブルも
いくつかあり、それが中国製か日本製かは知る由もないが、その
一つがこのサルのテーブルではないかと推測出来る。

オランダ船の入港だけが許された出島だが、オランダ傭船として
入港したアメリカの船フランクリン号のように(かなり多くの漆器が

 

持ち帰られ、現在はボストンのピーボディ・エセックス博物館
多く収蔵される)、かなり多くの外国船がオランダ国旗を掲げて
日本に来たと思われる。

特に1811年以降はアジアの拠点バタビアをイギリスに奪われた
オランダは次第に、その影響力を奪われていく。出島での貿易も
オランダ船と言いつつイギリスの傀儡的になったのではない
だろうか。そう考えると、このサルのテーブルがイギリスにやって
来た経路もなんとなく想像出来る。

こういう物こそ、日本の博物館が購入し、是非研究して欲しい物
である。

 

Dscf2047

 

 



恐らく、屋根裏などに保管されていたのではないだろうか。西洋で

 

よく見られる紫外線による表面劣化が殆ど見られない。薄貝の下の

 

色も退色せずに綺麗に残っている。

サルも剥製?、と一瞬思ったが、木製。しかし、毛皮の部分は本物
かもしれない。

 

Dscf2043_4

 

 



つくづく、不思議な一品。




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