家具のディテール:トライポッド・テーブル
Detail of Furniture: Mahogany Tripod Table
18世紀の初頭、お茶を飲む事が次第に人気になるの連れて、
その需要が上がっていったこの時代の新しい形の家具、
トライポッド・テーブル。
大概の物は、使わないときに端に寄せて置けるように、天板が
開閉式になっている。
天板を出した時には、このバンジョー・キャッチと呼ばれる、
バネ式の爪が、
下の、真鍮製の受けの部分に入り、固定される。
支柱の一番上には、二舞ほぞが切ってあって、天板を主に
支える四角いブロックに差し込まれ、膠と楔で接着されて
いる。
支柱のスパイラルの彫刻。一番太い所で4インチ(約10㎝)弱。
質のいいマホガニーが贅沢に使われている。
マホガニーは1721年に材木にかかる輸入関税を完全に撤廃
したことにより急に大量に輸入され始めた材である。まだ材が
豊富にあり、安かったこともあり、チッペンデールが出てくる
以前位までのこのジョージ2世の時代の家具は、無垢の
マホガニーを贅沢に、そして男性的に使った意外に無骨な
感じがするものが多い。
今では、輸出禁止になってしまっているこの本当のマホガニー、
同じものを作るのは不可能と言う事になる。
天板も一枚板。大体この手のテーブルは6/8から7/8インチの
厚さ(19mmから22mm位)が相場なのだが、これまた贅沢に
1インチの厚みがある。
縦76mmに対し、横750mm。この15mmの差は、室内の暖房が
発達したここ50年ぐらい縮んだのであろう。部屋の密封性が
良くなり、室内が乾燥し、木材の含水率が下がったのが原因
だと思われる。
天板裏のべアラーと呼ばれる反り止めも木目と対角方向に
螺子で取り付けてある。べアラーのネジ穴が、螺子の径より
若干大きいのは縮みによる割れを防ぐための遊び分か。
マホガニーは本当に大きな木で、初期の頃は本当に大胆に
使われていた。上は、英国領ホンジュラスでのマホガニーの
丸太の様子。俗に言う、リアル・マホガニーではないが、木の
大きさは大体想像がつくだろう。
脚はクイーン・アン様式の流れをくむ綺麗な曲線。先の方は
摩耗で少し擦り減っている感じなのかで丸まっている。
脚は蟻ホゾで支柱に下から差し込まれ固定されている。
支柱の底の部分には、お約束のスパイダーと呼ばれる
補強金具がカットネイルと呼ばれる鍛冶屋が作った釘で固定
されている。
チッペンデール以降、ロココの影響を受け、デザインが洗練
されるのか、もう少しほっそり、グラマラスな曲線になっていく。
マホガニーの需要はうなぎ登り、が、供給は下火へ。マホガニー
がべニアで使われるようになるのもそんな影響。
この18世紀前半の短い期間の、バロック・スタイルの影響を
受けたであろうマホガニーを贅沢に使った無骨な感じの男性的
な家具たち、意外と個人的には好きである。
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