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2014/05/10

"The Restorer's Handbook of Furniture"

「家具修復士のためのハンドブック」

Dscf2553

多くのこの手の家具修復に関するマニュアル的な物が発行され
ている。(もちろん基本的には外国語だが)

プロフェッショナルとしてある程度一通りのことを経験してしまうと
この手の本を開く機会もめっきり少なくなってしまう。

そんな中でこの、「家具修復士のためのハンドブック」。

結構古い物である→1977年発行。

勿論、基本としては伝統的な技法を使った家具修復なので、多く
の事は全く変わっていない、もしくはほとんど変わらない、である。

英語圏の人間(第二外国語として英語しか持っていない私自身も
含む)は、基本的に他言語(英語以外)で書かれた文献には
無頓着である。

これは英語に翻訳された本である→原著はフランス語。

ヨーロッパに於けるアンティーク家具の世界において、その
デザインの原型はいつでもロンドン、もしくはパリからやってくる。

質実剛健のイギリス製に比べ、ベニヤやギルト・ブロンズのの多用、
構造の違いなど、生活習慣や考え方の違いから生み出された
フランスの家具。そんな所を教えてくれるのはとても面白い。

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使う材も、少しづつ違ったりする。

Dscf2555

17世紀の末から、パリで流行した家具、ブール・マルケトリーに
ついても1章割いている。70年代の初頭頃、ルーブル美術館の
修復部門ではこのブール・マルケトリーの修復にPVA(日本でいう
白い木工ボンド)が使用されていたそうだ、と言うような、
いまでは、修復士がびっくりするような話が紹介されている。

ロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館の修復部でも
その昔、いまでは間違いなく"No, No"と言われるアンモニア溶液
がギルト・ブロンズのクリーニングに使われていたりする。
(V&AのHPを見てみると確認出来る。)

現代の修復は、伝統的な技法の上に最新のサイエンスや素材を
いかに乗っけていくかがとても重要なポイントになっていて、その
最新の部分に関してはトライ・アンド・エラーの繰り返しだったり
する。勿論、現代になって新しく起こってきた問題に対処するため
にも絶対必要なものである。

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ギルディングで、金箔を貼る前の様子。

一番下地には黄色のクレイを使ったボール(Bole)。
彫刻の一番底に金が入らなくても目立たない。
赤のクレイを使ったものはその上に、彫刻の中の高い所に
ハイライトを出すために塗られる。金箔は少しだけ半透明な性質
を持っている為、下の赤が金箔に暖かい色味を与える。

たかが修復、されど修復。
国が違えば、道具が違う、やり方が違う。
新しい視点という物は絶えず、新しいアイデアを与えてくれる。
良書。

"The Restorer's Handbook of Furniture"
Daniel Alcouffe
A Van Nostrand Reinhold Company
1977






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