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2014/06/14

Kantharos

カンタロス杯

古代ローマ・ギリシャで使われていた陶器の中にカンタロス杯と
呼ばれる形のものがある。

この形は葡萄酒(ワイン)の物。左右の高い取っ手が特徴。
このギリシア語の「カンタロス」と言う言葉、コガネムシを意味
するそうだ。

Dscf2875_2

素材は、テラコッタ(Terra Cotta)。その上に黒の釉薬。
古代ギリシアのボイオーティア地方で作られたものに良く似て
いる。

2002970300

上はイギリスのレディング大学所有の物。黒い釉薬の上に白で
絵が描いてある。紀元前450年頃の物。

200621t_copy

次の物は釉薬の程度がいい。アメリカ、コロラド大学所有の
カンタロス杯。脚の中央に同じように2重リングの装飾がみえる。
御想像の通り、取って(アーム)の部分が壊れて工房へやって来た。

壊れた接合の部分には何種類かの接着剤の跡。
一度目は膠で、二度目はその膠をきちんとクリーニングせずに
エポキシ系で接着してあったようだ。

剥離剤や、ウォーター・ジェルで接着剤を取り除き、アルコール、
アセトンで表面を綺麗にする。
テラコッタの場合、パラロイド72をアセトンで希釈したものを使う
のだが意外に欠損部が接着面に多いのでエポキシ系の接着剤
を使用。

Dscf2870

釉薬が剥がれないことを確認して細く切ったマスキングテープで
固定。

その後に、ミリパットと呼ばれるエポキシ系の充填剤で欠損部を
補って仕上げた。

丸い壺と言うのは、直すのが難しいという。

丸と言う形が、内部の微妙な張力を旨くバランスを取っているのだが、
壊れることによって、そのバランスが崩れる。そうすると、直す時に
うまく元の丸に戻らないのそうだ。

まだまだ奥が深い修復の世界である。





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