The Drapers' Company
ドレイパーズ・カンパニー
今週末のロンドンはオープン・ハウスと呼ばれるイベントがここそこで行われていた。このイベント、ロンドン市民への建築やデザインに対する啓蒙を目的とする。そういう訳で800を超える普段は入ることが出来ない建物に入り、中を見ることが出来るという建築オタクにとっては楽しみなイベントである。
このドレイパーズ・カンパニーも一般に公開されていた建物の一つ。
ドレイパーズ・カンパニーのドレイプ(ドレープ)はファッション用語のあのドレープ。ゆったりとしたひだの事。その名の通りドレイパーズ・カンパニーは羊毛や生地の取引を仕切っていた商工組合。その昔正式には、”The Worshipful Company of Drapers” と言われていた。
ロンドンに110あったリブリー・カンパニーの一つ。日本で言う、鎌倉、室町時代に存在した座と同じような物であろうか。かなり古くからこのギルドと呼ばれる商工組合存在していたようだが、ドレイパーズ・カンパニーの場合、きちっと王室からの特許状が出されたのが1346年。その後一貫して、その場所にあり続けた由緒正しいカンパニーである。現在は商工組合的なギルドとしての役割はしていない。チャリタブル・トラスト(慈善信託、なんのこっちゃだが)として存続している。
ロンドン金融街シティの真ん中。まだ多くの工事が続くビル街の一角。外からはその内装を想像することは出来ないに違いない。

一階の受付を通り、階段を上る。
ドローイング・ルームは映画の撮影でもよく使われる所。ジョージ5世を画いた映画「英国王のスピーチ」もここで撮られた場面が登場する。


上の2枚の写真を比べて欲しい。同じ部屋。下の白黒は1920年頃に撮られたもの。しかし、調度すらほとんど変わっていないのには驚くしかない。
さらに奥に進むと、メインのホール。壁面には歴代の王様の肖像画が並ぶ。


1666年のロンドンの大火事の際に、被害を受けた建物は新しく建て直されたようで、その後何回かの増築、改装を経て今に至っている。内装は19世の後半にかなり大々的にやられたらしく、今現在もその通りに修復されていると聞く。
上のホールの椅子、オリジナルの物は19世紀初頭リージェンシー時代の物。その次にヴィクトリア時代後期にかなりの数のコピーがまた作られ、20世紀にもウレタン塗装で仕上げたような物がもう一度。ホールの周りにぐるっと並べられた椅子。何脚あるのか想像もつかないが、同じデザインで作り続けられる意気込みに感心してしまう。

こういう場所が、このように未だ残っているところに、イギリスのイギリスらしさを感じ得ずにはいられない。(年間の維持費だって相当な物だろうに、、、。)
と、庶民は下世話なこと考えてしまうのであった。
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