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2015/05/31

「平成蘭学事始」

Episodes uit de geschiedenis van de Japans - Nederlandes betrekkingen in Edo en Nagasaki

上はオランダ語で付いている副題「江戸・長崎の日蘭交流史話」。

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著者は、江戸時代、出島、長崎の阿蘭陀通詞と呼ばれる、オランダ語通訳に関する研究の第一人者。ここ20年余りに書かれた、小文、短文の類を集めた物。

私たちの世代が学生だった頃習った、「鎖国」などと言う言葉がほぼ死語になってしまうほど、歴史学において、新しい研究が盛んになり、もっと様々な事がわかってきた。

オランダ人を通した、輸出漆器の繋がりで読んでみた本だが、自分があまりにも物を知らないのにびっくり。あとがきで著者が述べている、一言に大きく頷いてしまった。


"通詞の関与を追及、片影を追って、出島はもちろんのこと、オランダ商館、長崎奉行、長崎の町役人、カピタンの江戸参府、オランダ宿、出島の三学者、蘭方医、蘭学者、輸入の品々、輸出の品々、出入り禁制の品々、人の交流、品物の取引とその行方、金銭交渉とその実態、海外情報・世界知識の入手・活用、鎖国日本の世界への発信、医術・医学、学術成果、軍事科学技術、機構や施設、生活文化、異国趣味、遊び、芸術などなどに目配りしなければいけない”無限世界”に、どっぷりとおちこんでしまった。"  本文あとがきより


詰まる所、ここに挙げた、どのテーマを取っても、その物を体系的に理解するためには、それ以外のこれだけの物に目を配らなければいけないと言う事。

人の生活に密着する文化的活動は一つだけ切り取っては、その全体像が見えないという事。

家具1つを例にとっても、その文化的背景を知ると、その意匠や材料、構造を、何故そうなのかを知るのに大きく役に立つ事が多くある。

戦争や革命で疲労困憊のヨーロッパに比べれば、何とも豊かだった日本の江戸時代。江戸時代の日本外交史の導入編として是非一読して欲しい本である。

「平成蘭学事始-江戸・長崎の日蘭交流史話」
片桐一男著
智書房 2004年






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