Smoker's Bow
喫煙者の弓?
キャプテン・チェアーと呼ばれる方が今では一般的か。ウインザー・チェアー・ファミリーの傍系に位置するこの椅子。19世紀後半にイギリス内のの様々な地域で作られたので、はっきりとはどこの椅子とは言えないが、デザインを見る限りはロンドン西側のテームズ・ヴァリーと呼ばれるテームズ河流域で作られたものと思われる。
20世紀初頭に、このタイプの椅子の簡略化バージョンの物がイギリス海軍で相当使われていたらしく、その名残からキャプテン・チェアーと呼ばれたのではないか。
しかし、元々はスモーカーズ・ボウと呼ばれていたそう。ボウ(弓)は背ずりからアームにかけての弧を画く曲線からそう呼ばれたのだろうか。
個人的には、俗に言うアンティークの椅子の中での座り心地では5本の指に入る一つである。これに腰掛けて吸う一服は至福の一時だったに違いない。

工房には、座面が割れた、まさしくバラバラの状態でやって来た。そのお蔭で座面の様子を知ることが出来る。

座面は楡の一枚板。座の後ろの部分最大厚は31mm。真ん中の一番薄い所は、約半分の16mm。その15mmの彫りこみ分がお尻にフィットする絶妙な曲線を作る。
やはりそこまで薄いせいもあるのだろう、動き出した材のせいでまんまと真っ二つになった座面を見るのは珍しい事ではない。
苦肉の策で行うのは、裏側に割れに沿って契りを入れる方法。
そういえば、自分でお金を出して買ったアンティークの椅子もこのスモーカーズ・ボウだった。引っ越した時に売り払って今ってもう手元にはないが、まだ元気に使われ続けているだろうか。
脚はザ・ヴィクトリアンと呼べる太めの挽物脚。
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