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2016/02/14

ギロウ・ランカスター

Gillow Lancaster

前回のブログで書いたギローズ・コレクションを守るための嘆願書まで2195人。賛同される方は、是非宜しくお願いします。→ Change.org




インターネットで少し調べたら面白い論文を見つけた。

「使い続けるための消費」 真保晶子博士。

副題には、イングランドの家具メーカーと消費者の実践、1780-1850年。

チッペンデール、ギロー・ランカスター本社の書簡、それに英国王室の家具コレクションにも所蔵されている19世紀前半に活躍したロンドンの家具メーカー、マイルス・アンド・エドワーズ社の書簡等を参照に、生産者と消費者の相互関係を考察している。

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著者の真保女史も書いているが、いままでの家具史は、生産者主導の様式、材質の変換史として描かれているものが主、経済的視点として流通や技術発展などが注目されることはあまりなかった。

それが変わってきたのはここ20年ぐらい。技術や流通的な視点から家具史を見直したClive Edwards氏や輸出入に関する法や材木(特にマホガニー)の流通などから家具史を見たAdam Bowett氏などの著作が個人的には気になっている。

今までの家具の本と言ったら、写真多数でという具合だが、新しいタイプは読ませる家具の本である。

大量生産、大量輸送に慣れてしまった現代の私たちには、イマイチぴんと来ない事かもしれないが、橋というものが一般に川にかかったのはほんのつい最近の事。それまでは、迂回するか、渡しを使うか手間がかかる方法しかなった。

家具一点にしても、既成の物を購入というわけにはいかない。特注というと、何か凄い感じがするが、以前は全て特注品。修理や手直しは当たり前、家具を作り、販売する生産者と購入し、使用する消費者の関係は、今よりもっと密だったはずである。


「使い続けるための消費」文中で、マホガニーに関する表記が出てくる。1830年のギローから顧客への手紙でサント・ドミンゴ産のマホガニーを絶賛している。

サン・ドミンゴ産はいわゆる、スパニッシュ・マホガニーと呼ばれていたもの。18世紀中頃までは主流だったジャマイカ、キューバ産が伐採しすぎて品薄になってきたと同時に、流行の変化により、スパニッシュ・マホガニーの木目が重宝される。この頃から、無垢で使われていたマホガニーは、べニアで使われるようになっていく。

そのスパニッシュ・マホガニーも1830年には手に入るのが難になってきていたに違いない。それを踏まえてのギローのコメントに違いない。

その当時の書簡、家具メーカーと顧客間の、というものは、色々なことを教えてくれる。が、その顧客がどんな嫌な奴でも、その事を書簡に書くことはない。そういう意味では、書簡だけでは裏の裏は見えてこないと言う事になる。

歴史家は、書簡などに残された、出来事、出来事の隙間を埋めていく仕事である。一度、その埋められた作業が世間で既成事実になってしまうと、それを覆すのは大変な作業である。その作業が、家具史においても、ここ最近にやっと出てきたという事なのだろう。楽しみなことである。


今では、直してもらえる家具という物は限られている。愛着を持って使い続けられてきたものか、市場価値や歴史的価値が高い物、それ以外は廃棄される運命。特に、アンティーク・コレクターズ・クラブが毎年出しているアンティーク家具の年次家具指数は2003年あたりを境にずーっと落ち続けている。つまりここの所、値段が下がり続けている。→最新版

以前は800ポンドほどの値札が付いていたウインザーチェアが今は350ポンドに値下がりしている状況。今の工業生産の既製品と昔のハンドメイドの特注品が同じ値段で売られていると、価値とは、値段とは、というものがわからなくなりそうで怖い。


古いから故に価値があるわけではない。

製作までに手間がかけられ、その時から愛情が注がれ、使い続けられているが故に価値があるのである。


ただしその価値が、市場的価値とは相容れない時がままあるが。





「使い続けるための消費」






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