抱出巻煙草容器
Lacquer Cigarette Dispenser
今では、たばこを吸う人もすっかり少なくなって、正規の需要なんてほとんどないに違いない、が、レトロなキッチュ・アイテムとしてよく見かけるのが、このシガレット・ディスペンサー。
アール・デコ期に流行り、色々な形のものが存在する。
シャグリーンと呼ばれるエイの革を張ったものはいまだに市場で高価で取引されている。
呂色塗りのシガレット・ディスペンサー。
上部の図案は、富士山。
いわゆる、日本からの輸出漆器である。
かなりラフだが、螺鈿で富士山、カモメ、船や波、灯台(?)が表されている。
前面の金属製のベロを引き出すと、煙草が一本落ちてくる仕掛け。
面白いのは、裏に新案特許番号が転写されている。
許特(○に井)案新
号七九四九四一第
器容草煙巻出抱
MADE IN JAPAN
昔の新案特許なんて調べた事なかったのだが、今はデジタルな世の中。
オンラインで色々な事がサーチ出来てしまう。
昭和5年の新案特許の登録。
1930年、アール・デコ期の真っただ中。
出願者・考案者は、静岡市の筒井梅次郎氏。
この当時、輸出漆器で最大であった駿河漆器。輸出寄木細工でも有名な土地柄、輸出漆器も相当数作られたはずだが、なんせ輸出用。
今、駿河漆器と言われてもあまりピンとは来ない。もちろん、静岡にも現物や、資料がそんなに残っているとは思えない。
こうやって特許番号などの公式書類から追っかけて行くのは、最近の家具史で良く見られる手法。
こういうのがもっと増えて、もっと情報が集まってくるともっと面白いに違いない‼
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