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2017/07/02

Upcycling

アップサイクリング

最近、アップサイクリングという言葉を、よく聞く。

リサイクルの上らしく、不要な物に手を加えて、付加価値を付けさらに良くする、高く売るという事のようだ。

家具に関して言うと、ただ色が塗ってあって「シャビーシック」調になっているものぐらいしか見当たらない。




某オークションで見た家具。

Commode
フランスの家具、18世紀の終わり頃。家具作家は、アダム・ウェイズウェイラー。あのマリー・アントワネットにも家具を納品している、王室御用達である。

表面は、日本の漆塗り。

さて、その頃日本は鎖国中。

どうやって作られたのだろう。




鎖国以前の日本、ポルトガル人が種子島に鉄砲をもたらし、西洋の国々との貿易が細々と始まった頃。彼らからの特注品で作られたものの中に、コンプトワールと呼ばれる両開きの箪笥がある。

イギリスの、バーリー・ハウスにある、英語ではキャビネット・オン・スタンド呼ばれる一品。


Jwa09039a2

日本で作られたのは、上の部分だけ。金箔張りの下のスタンド部分はイギリスの職人が上に合わせて作った物。


扉を開けてみると、


Jwa09039c11


Jwa09039c1


あれっ、とお気付きの通り、そお、この箪笥
部分が、上のコモドには使われている。

16世紀の終わりから、17世紀の初めにかけて、多く輸出されたこのコンプトワール。イギリスでは、そこまでロココ・スタイルが強くなかったので、いまだ生き延びているコンプトワールは多いが、ロココが本流となったフランスでは、それを利用しての新しい形の家具が多く作られた。

これはその一つの例。



引き出しを開けると、ヒノキのいい香り。


Dsc04916

引き出しの接合は、この頃のヨーロッパでは蟻組み
継ぎが一般的なのだが、これは包み打ち付け継ぎ。日本製の典型。

引き出しを出すと、


Dsc04917


下の板も、側板もヒノキ製。

つまり、両扉を外した箪笥部丸ごとコモドに組み込んである。

人気が無くなった家具を、新しく作り直し、また売る。



このコモド、もともとはサイドの局面部分が開いていて、棚が付いていたようだ。

そのような家具は
Commode a l'Anglaiseと呼ばれていた。訳すると「イギリス風の脚付き箪笥」。イギリス・マーケット用に作られたものなのだろうか。


Dsc04920


これぞまさしく、究極のアップサイクル。




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