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2018/05/13

香水箱

Perfume Box


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日本製の輸出漆器。

江戸時代後期の物と思われる。

この江戸後期に突然始まる青貝(螺鈿)細工を主にしたシリーズの輸出漆器群の中では比較的初期の物。

全体が、太陽の光のせいか褪せて、艶消し仕上げのようになっている。


良く見ると、鍵穴周りのエスカッチョンと呼ばれる錺金具が、逆さまの様に見える。

しかし、1600年前後に輸出された所謂南蛮漆器と呼ばれるものの中には鍵穴がひっくり返っているものが多く存在する。

つまり、その頃の日本の人にとってはそれが普通で、今の上が丸い穴で、下側に長方形の部分がくっついている形は西洋人の思う正しい向きという事がわかる。


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実際、この香水箱、上の様にエスカッチョンがつけられていた。

でも、下側の長方形の部分が錠まで抜けてないのがわかる。


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裏側を見ると、そのエスカッチョンは4つの爪で木部本体に固定されている。

あれっ、一つ爪が折れてるってわけでなく、ぐるっと180度回すと、爪のない部分が長方形の鍵の旗の部分の穴のところに来る。

この時期の、輸出漆器について、ここ20年ぐらいに多くの事が判ってきたが、この使われている錺金具に関しての考察は驚くほど少ない。


オランダ東インド会社に銅を輸出していただけあって、銅は豊富にあったが、18世紀のヨーロッパの家具類に多く使われる真鍮(黄銅)は、作るのに亜鉛と混ぜる必要がある。

その亜鉛は、江戸時代には100%輸入に頼っていたため、ある程度幕府の管理下にあったと思われる。

1780年に、江戸・大坂・京都に真鍮座と言う真鍮を一手に扱うこと任された組合が作られた。7年後にはその制度は廃止されてしまうのだが、その後もおそらく同業者が専売を続けただろうという事は想像出来る。

この香水箱に使われている錺金具、エスカッチョン、錠、蝶番、釘、全てが銅製で銀張りが施してある。

ただし、錠の中で使われるばね、留め金の部分には銅より硬い真鍮が使われている。


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錠本体は箱の下部分、上のフックの部分は蓋に叩き込まれている。ただ叩き込まれているだけなので、無理に開けると抜けてしまう。(鍵としての役割をしていない)


この輸出漆器群も、後期になるにつれて、薄い貝の下に色を付ける伏彩色が主流になる。その頃の物には、錺金具に真鍮を使う割合が多くなるようだ。


上部には

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紅白梅、スミレにカツラ?のデザイン。


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「Odeurs」の文字。

どうも調べると、フランス語で匂い、オランダ語では香水を表す言葉のよう。

オランダ人が発注したと考えると、やはり香水箱か。


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中には、何かが4つ入っていた跡。恐らく、オランダ人が持ち込んだガラス瓶に合わせて作ったものではないだろうか。


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蓋裏の螺鈿は、日に晒されていないせいで、かなり良い状態。


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コメント

いつも楽しく拝見しています。
今回も鍵穴の考察はとても勉強になりました。
ありがとうございます。
錠の構造から、切込みが上の方であれば、左にちょっと回せは開錠できそうで、
使う側からすると便利そうですね。

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