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2018/07/08

水銀法の鏡

Tin-Mercury Amalgam Mirror

水銀はあまり馴染みのない物質である。

大概の人が知るのは、古いアナログの体温計の中の物質。あるいは、子供の頃、社会科で習った日本の4大公害病の一つが水銀を含む物質で引き起こされたことぐらいではないだろうか。

EUで水銀の販売、輸出に関して厳しい法律が課されたのはそれほど古い話ではない。(2008年)

元素記号でHgと表わされるこの物質は、金属元素でありながら常温、常圧では固体にならない唯一の金属として知られている。

その昔は、長寿の薬として常用され、また、他の金属と良く混和し合金を作るので、様々な事に使用されてきた。家具では、飾り金具の鍍金として、水銀と金を混ぜ躯体に塗り付け、火に炙り、水銀を蒸発させ、金を躯体に定着させるという方法に使われていた。


Dsc06345


古い鏡を枠から外す。鏡自体が高価だったこともあり、その木枠にも様々な装飾が施されていて、その修復の為に、鏡部分を外す場合が多々ある。

その時、たまに作られてから一度も修理されていない、そのままの物に出会う時がある。

一見、ただの鏡の裏側。今の鏡の裏が銀色の事はほぼ無いが。


Dsc06347

今の、鏡では見ることが出来ない粗い裏側。

14世紀に発明された錫箔と水銀を使った水銀法と呼ばれる鏡。

その、鏡を外した木枠の内側を見てみると、、、、。


Dsc06309

木枠角の部分の内側。

銀色の丸い球がいくつか見える。


Dsc06310

集めてみると、、、、


Dsc06312

液体状の水銀の玉がまだコロコロしている。

鏡の裏に均一に塗った水銀もある程度錫と合金化して固着したものの、鏡のように長い間垂直に置かれていると、上のほうが薄くなり、下の方に水銀合金が下がってくる。

さらに下がってガラスから滴り落ちた水銀(合金)が枠の内側に溜まっている訳である。




ただ、この金属水銀は比較的安全と言われているのでご安心を。



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コメント

はじめまして。
1800年代フランスの古い水銀法壁掛けミラーを購入したのですが、リビングの人がいる所に掛けても大丈夫でしょうか?
ただ、この金属水銀は比較的安全と言われているのでご安心を。
とありますが、置く場所を考えるなど工夫は必要でしょうか。

Mitsuさん

コメント有難うございます。

私の経験から言うと、水銀法の鏡の使用で事故が起きたという話は聞きません。基本的に、水銀が怖いのは気化した水銀の蒸気を吸うケースです。マッドハッターの例もある通り、気化した水銀は危険です。
鏡の裏側が、もし露出しているようであれば、何かしらで覆いをすることをすすめますが、既に覆ってあれば、それほど気にする必要はないと思います。ただ、何かしらのアクシデントで割れてしまった場合は要注意を。水銀自体触っても大丈夫ですが体内に入るのは好ましくないので。


>
>はじめまして。
>1800年代フランスの古い水銀法壁掛けミラーを購入したのですが、リビングの人がいる所に掛けても大丈夫でしょうか?
>ただ、この金属水銀は比較的安全と言われているのでご安心を。
>とありますが、置く場所を考えるなど工夫は必要でしょうか。

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