チャイニーズ・ラッカー
英語ではVarnish(ヴァーニッシュ)という言葉も並行して使われているが、どうやらこちらは、植物系の天然樹脂を溶液に溶かしたもの的に使われることが多い。
漆仕上げを、ラッカー仕上げと呼ぶように、もともとは漆を使った高光沢の仕上げの事を指していた。ただ、技術の発展により、化学的にあの光沢を作り出せるようになったニセ漆仕上げもラッカーと呼ばれる為に、そのような混乱が起こる。
実は、同業者でも、正しく使い分けてない人を良く見たりする。
18世紀、フランス製ラッカー・コモド。
マーブルの天板のを、取ると製作者のスタンプが押してあり、きちっと作られた逸品である事が判る。
ただ、このコモドをパッと見たときに、実はこのコモドには、本物のラッカーと偽物のラッカーが使われていることを知っている人は少ないと思う。
サイドのボディの部分はこんな感じ。
鍍金が施された真鍮の金具で、額縁の様に図柄を囲んでいる。
大概の人が、これをデザインとして把握し、不自然な点はないと感じるはず。
真鍮の飾り金具は一続きではなく、パーツパーツに分かれている。
左の角のいくつかを外してみる。
実は、その飾り金具の下に、接合部と思われるラインが隠されていたのが判る。
そのラインの外側は、つるつるに見えて、内側は小さなひびが表面に入っているのが判る。
何故??
つるつるは、ヴェルニ・マルタンと呼ばれる、フランスの偽ラッカー。ひびひびは、元は何だったかはわからないが、中国製の漆仕上げ。
ヴェルニ・マルタンは植物系の油に琥珀の若いコーパルを溶かしたもの。それに、塗りやすくするためにテレピン油をちょいと混ぜることから、こう呼ばれるようだ。
漆の層の厚さが判る。
漆塗りの表面を下地の木ごと薄くそぎ取り、それをコモドの表面に張り付けてある。その周りを、ヴェルニ・マルタンで補色し、接合部を金具で隠して一丁上がり。
18世紀は、シノワズリーが流行った時代。中国物が人気ではあったが、古臭い形では今のインテリアにマッチしない、という事でその当時のディーラーが売るために産み出した苦肉の策。
果たして、このようなコモド、正式にはどう呼べばいいのだろ。
表面積的には中国製漆仕上げの面が多いので、やっぱりチャイニーズ・ラッカー・コモドか。
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