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2020/04/06

江戸後期輸出漆器概論その4(仮)

Introduction of Export Lacquer in late Edo Period Part 4 (Draft)

 

ストゥッツェルが、オランダ東インド会社を辞めた後、1795年に、

ロシアのエカテリーナ2世へ献上した珍品の中に、

サンクトペテルブルクの風景画のプラークが含まれ今現在もロシアの

クンストカーメラ(科学アカデミーから移管された)に所蔵されること

から、このプラークが、それより以前に作られた物という確かな証拠

となりえる。しかし、多くのこの時代の輸出漆器が作られたもの年代

を推測する基準作品となりえる手掛かりを残念ながら持っていない。

(スウェーデンのグスタフ3世を描いた蒔絵プラークに1788と

書かれたものが存在する。スウェーデン人のストゥッツェルの注文か)

 

他の風景画のシリーズとしては、サンクトペテルブルグと同様

ヨーロッパで販売された版画の図版が出島に持ち込まれて作られて

いる。現在まで見つかっているのは、ストゥッツェルの発注したと

されるサンクトペテルブルグ。ローマの名所シリーズ。トレビの泉、

ガイウス・ケスティウスのピラミッド、サンテウスタキオ広場

(聖エウスタキオ広場)、マエケナスの塔と庭園、ネロ宮殿、

アウグストゥス廟や古代ローマ図。他の都市ではメッカの

カアバ神殿に、ロンドンのテームズ川からの眺望図が確認されて

いる。どれも、1780年代以前の図版が元になっているので、

時代特定にはならないが、どこが描かれているかで、発注者や

寄贈先がなんとなく見えてくるのは気のせいか。

1_20200406164501

その中で、「Sasaya」と言う、恐らく販売者もしくは製作者であろう

銘を持つ輸出漆器群が存在する。

 

戦記物の蒔絵プラークの装飾を施されたセクレティア2台、

ドッガー・バンク海戦シリーズ、セント・メアリー岬沖の海戦、

古代ローマを描いた横長方形のタイプのプラーク。そして、比較的

最近見つかった、ファン・レーデの銘も併せ持つ

ライティング・スロープと呼ばれる携帯膝机に、昨年フランスの

オークションに出てきた戦記物セクレティアと同型2台。


出島の通訳詞の書類やオランダ東インド会社の明細書にも出て来る

このササヤ。「1792」という年号と共に書かれていることが多い

横型長方形プラーク群は、意匠的にも、字体的にも同工房で作られ

た物。それ対し、4台のセクレティアは、家具意匠的にも、描かれ

ているモチーフからも1800年以降の物と考えるのが妥当と思わ

れる。

 


間違いなく、どちらの群もそれぞれ同じ工房で作られたものである

のは違いない、が、この2つが同一のササヤなのか、否かは、確定的

な証拠は今の所ない。しかし、全体の意匠、技術的に見る限り同じ

ササヤを屋号とする製作者、販売者、もしくは製作販売者とみて

間違いないように思う。

 


携帯膝机、この当時の貿易に従事する船員ならば、皆が持っている物。

それこそ、限られたスペースの船内にそんな多くの私物を持ち込む

ことが出来ない。船長ならいざ知らず、船員などであれば小さな行李

一つという者も少なくなかった。これも、もともとはイギリスの

従軍用にデザインされたものだが、そこここの植民地でコピーが作られ、

インドなら白檀製に象牙張り、清なら蒔絵使用などという

バリエーションががいまだ、骨董市場で見ることが出来る。

2_20200406164501

2010年の、イギリスの港町のオークションに出品されたこの携帯膝机

は、収納しやすいように、取っ手などは引っ込んでいて、出っ張らない

ようにデザインされている。横には引き出し、蓋を開けるとビロード

を貼った、膝の上に載せる書き机に変身する優れモノ。もちろん、

鍵がかかるようになっているのでプライベートな私信などをしまって

おける。内側には、「Lakwerker Sasaya」。蓋上には、バタヴィア港

からオランダ東インド会社が出航するところが描かれている。その下

には、やや薄いくはなっているが「DE REEDE VAN BATAVIA」。

図柄と言い、ファン・レーデの銘と言い、以前の使い回しの感は否め

ない。実際、使える図版には限りがある為、何度も同じ構図で作られ

ているドッガー・バンクの海戦の様に、何度もコピーが作られたものが

いくつか存在しているので不思議ではないが。

 

その5へ

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