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2020/04/24

江戸後期輸出漆器概論その9(仮)

Introduction of Export Lacquer in late Edo Period Part 9(Draft)

 

 

Dsc08621_20200424152301

 

ドゥーフが帰国した後に書いた著書「日本回想録」の中には、1806年

の江戸参府の際の、青貝屋への初めての注文については書かれていな

い。その参府時に、私物の中で黒漆塗りの膝机らしきものを使用して

いる、と言う記述がある。バタヴィアから船で運んできた家具類と並

んで、恐らく日本製の輸出漆器と呼ばれるものが同時に使われていた

という事になる。(恐らく従軍家具のデザインで作られた物。)

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出島出入りの絵師川原慶賀の手になる「蘭館絵巻」の新年祝いの晩餐

一枚だと思うのだが、この絵にはどうやら2バージョンが存在する。

注目は右奥中ほどのテーブルに乗っている黒い箱。蓋が開いて、中の

のビロードらしき張地とデキャンタ―(ガラス製?)が見える。

1_20200424151601

もう一つのバージョンは、実は蓋が閉まっていて中が見えず、ただの

黒い箱にしか見えない。ただ、これが本当に上図のような漆器であると

すると、出島のオランダ商館を訪れた人は、無条件に西洋の形を持った

輸出漆器の良い具体例を見ることが出来たという事である。実際、実物

を、その目で見れば、当然注文もしやすくなる。

 


1799年に、出島に来たデブロー船長の会計簿には、大量の漆器の注文

が散見できる。商館内にあった物だけでなく、出入り業者の持っていた

現物のサンプルなどを確認しない限りは、ここまで思い切った注文は

出来ないはず。

 


1804年のロシアの使節レザノフが長崎に来た際には、商館長だった

ドゥーフは贈り物のお礼として、青貝で装飾の入った漆塗りの机を送っ

ている。(机と呼んでいても、実は膝机だと思うのだが。参府時にも

使っているもの?)レザノフの出航時にも、彼のリクエストにより漆塗

りの煙草箱やお盆を斡旋している。ドゥーフの言によれば、かなり注文

したようなので、その資料と現物が残っていれば最高の歴史的資料にな

るのだが、存在ははっきりと確認出来ない。

 


その後、ドォーフの商館長時代、副商館長だったブロンホフが後任を

務めた。その時の書記だったフィッセルが著した「日本風俗備考」の中

で、

 


「武右衛門(青貝屋)とササヤ(笹屋)の2人は、漆器と塗金細工の細工

専門の調達人である。昔から決まった形に対しては、彼らは一定の適正

価格表を持っている。しかしながら、もしも彼らに対してごくわずか

ばかりでも変わった型のものを欲しいと申し出ると。たちまちアッと言

うほど高価になるのである。それで注文するに当たっては、非常に精細

な注文をつけなければならない。というのは、彼らは苦心してヨーロッ

パの型に倣おうなどとはつゆほども思っていないので、そのために彼ら

の嗜好に委ねてしまうと、その作品は通常まったく台無しにされてしま

うのが普通だからである。一般的に言って、彼らの見事な作品が、外国

人の手の中で光彩を放つことを妬ましく思っているかのように、彼らに

対してヨーロッパの雛形を提示しても、それが彼ら自身の考案になる作

品と同じように立派にまた巧妙に仕上げられることを期待することは絶

対にできないのである。また、織物、磁器、陶器および銅器の調達人た

ちについても、まったく同様のことが言える。」

 


彼が書記時代だった1820年には以前とはかなりの変化が見て取られ

る。形、サイズだけでなく、飾り金具にまで気を使った初期の

輸出漆器群。プラークの原画からの写しやナイフ・アーンや膝机な

どの瓜二つのコピーの仕方は、フィッセルの言によると、かなり

高価になったことが予想される。

 


この頃には、かつてはオランダ東インド会社が輸出漆器をギフトとして

使っていた時代は終わりを告げ、脇荷貿易としてお土産的な物が盛んに

注文されるようになったと想像出来る。煙草入れや針刺と呼ばれる裁縫

箱等の小物が中心となったのであろう。オランダの風景画が青貝細工で

施された物が注文されだしたのもこの頃からではないかと思われる。

 


フィッセルは、上司のブロンホフ、のちのシーボルトと並び、

オランダ王国の初代国王のウィレム一世の文化人類学的目的を持った

「ロイヤル・キャビネット」の為に様々なものを日本で収集した一人。

シーボルトが、自身のコレクションを国王に寄付したのを機に、

ロイヤル・キャビネットのコレクションも併合され、現在の

国立民族学博物館となり、その所蔵となっている。

 

 

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