Circular Sweetmeat Box
砂糖菓子用の丸箱
「スイートミート」、聞きなれない言葉である。
甘い肉?
昔は、食べ物全般をミートと呼び、甘い食べ物、つまり砂糖菓子や砂糖漬けの
果物等を呼んだようだ。言葉としては、ほぼ絶滅種で、普段の生活で聞くこ
とはほとんどない。
旅館に置いてある、湯飲みが入っている丸箱を想像させる。
基本蝋色漆に、金蒔絵、青貝細工の折枝模様がちりばめられている。
空白の使い方と言い、和のデザイン。
もともとは、清でヨーロッパ人が作らせた同型の物。それが、18世紀末頃に
清人、もしくはオランダ東インド会社の人間によって、出島経由で日本に持
ち込まれたと考えられる。
それが日本の職人によって模倣された。
蒔絵による加飾。
特筆すべきは、青貝細工による装飾。
鳳凰。
18世紀後半から、幕末辺りまで出島経由で輸出されたササヤで作られた物に良く
見られるデザイン。ササヤ製の銘が入ったものは、決して多くないが、2代に渡っ
て輸出漆器を手掛けたとされる。
デザイン的には19世紀初頭までの物に近い。
蓋を開けると、仕切りがあり、陶製の9つの入れ子。
残念ながら、4つは欠損している。
入れ子の内側は、丸箱と同じように、黒い釉薬に金で折枝模様が描かれている。
外側は、白い釉薬に花模様。素焼きはテラコッタ色。陶磁器は専門ではないので、
これがどこの物だかはわからないが、判ったら漆器の生産地が特定出来そうであ
る。底には、ここにも鳳凰が描かれている。
どうもこの形は、人気の商品だったらしく、アンティーク市場でよく見かけるが、
大概は清で作られた物。日本製で見かけるのは、大正、昭和初期の物か。
丸箱自体は桧製。かなりしっかり下地が塗られその上から蝋色漆。
日本の陶磁器のコレクターの方のブログで見かけた一品。
同じ、青貝細工でも、かなりヨーロッパ受けする大柄なデザインになっている。
奇麗な青の顔料が使われていることから1840年代以降の物ではないかと思わ
れる。
中は7つに分かれている。仕切りはない。
入れ子の裏には、蔵春亭三保造の銘が。
つまり、有田焼の陶器が使われている。この銘が使われたのが、1840年代から
70年代という事を考えれば、かなり長い間、同じデザインでこのタイプが、作
り続けられてきた事が判る。
このタイプは、まだ多くは確認されていないようで、さらなる作例が発見され、
比較することによって、また何かが判るかもしれない。
漆器を撮るのは本当に難しい。誰か言い撮り方教えてください。
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