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2021/01/31

Sussex Chair

サセックス・チェア

 

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イギリス、ビクトリア女王時代の中期の、大量生産と言う物に対するアンチテ

ーゼとしてのアーツ・アンド・クラフト運動を代表する一脚として知られる。

 

ただ、その割には、そもそものデザインの出所にはわからないところが多い。

 

そのアーツ・アンド・クラフト運動を主導したウイリアム・モリスの友人の

建築家フィリップ・ウェブのデザインだとされる。

 

が、もともとはそのモリスの工房で使われていたサセックス地方の田舎椅子

にインスピレーションを受けてそのデザインが誕生したらしい。

 

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19世紀の田舎椅子の傾向を見ていくと、ランカシャーを中心とする北部やイー

ト・アングリアと呼ばれるノーフォーク州、サフォーク州などで見られる、

ラッシュ・シートと呼ばれるイグサ編みの座面。挽いた丸棒を少し曲げた後ろ

足。北部で見られるラダーバック・チェアに類似する。が、ラダーバック・チ

ェアは背の高い椅子が多く、背ずりのぱっと見のデザインは、むしろイースト・

アングリア地方の椅子を彷彿とさせる。

 

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特徴的な、背ずりの挽き物。4つ並べられている。これは、同じデザインをあ

まり見たことがない。

 

本当に、その工房にあった椅子はサセックス地方の椅子なのか?

 

最終的に、デザイン自体がオリジナルなものに落ち着いている所を見ると、

インスピレーションは、あくまでインスピレーションで、ウェブの総合的な

デザイン能力が高い事が見て取れる。

 

1860年に建てられたウイリアム・モリスの私邸レッド・ハウスの為にデザ

インされ、その後第一次世界大戦後まで作り続けられベストセラーになっ

た一品。

 

長く作り続けられている分、細部のデザインが少しづつ違うものが存在する。

 

Dsc09551

 

椅子自体は、ブナ製。曲がったアーム部やクレストと呼ばれる背ずりの横棒は

トネリコが使われる。ラッシュ・シートの保護板は、樺材が使われているよう

に見える。

 

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秀逸な曲がり。木目を見ると、曲げているというよりは、削り出しているよう

に見える。塗装も、濃い茶色から、黒までばらつきがある。

その昔の黒は、今と違ってあまりいいことを意味しない。イギリスの家具史上

黒がアクセントとして出て来るのは誰かの死、喪を意味することが多い。

 

恐らくは、ビクトリア女王が亡くなった際に、黒く塗られた物が作られたので

はないかと思う。

 

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ウェブのデザインの中で、一番特徴的なのはアーム部の構造。

普通空白が開く、アームの下に、並行するように2本の丸棒。縦に使われる事

がほとんどの中で、横に使われているのは、田舎椅子的と言うか、もう少し洗

練された印象を与えてくれる。

 

普通ラダーバック・チェアのアームは、アップライトの丸棒に開けられた穴に

差し込まれたアーム部が前脚の上部のダボに差し込まれ固定される。

 

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アームを支える部分が、座面に開いた穴に差し込まれ、その下の貫に固定され

る。座った時に、内側から押される力を支持するようになっている。接合部だ

けに頼るのだけでなく、構造全体で支える。建築的である。

 

類似するシングルのサセックス・チェアを持っているが、機会があれば、この

アームチェアも欲しいなと思ってしまう。

 

ビクトリア・アンド・アルバート博物館にも収蔵される一脚。

 

 

 

 

 

 

 

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