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2021/02/14

Queen Anne Dressing Mirror

アン女王時代のドレッシング・ミラー

 

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この手のタイプ、アンティーク家具の入門としては手頃な一品ではないだろ

うか。トイレット・ミラーとかドレッシング・ミラーと呼ばれる。

 

それこそ、私が小さい頃は、三面鏡の付いた化粧台(机)が、一般にお母さん

たちが使っていた形。

 

歴史的に見ても、男女共々身だしなみを整えるのには鏡が必要である。14世

紀にイタリアで、水銀法によるガラスを使った鏡が発明されて以来、かなり

長い間、大きな盤面な物は作れなかった。鏡と言うよりは、ガラス制作に

おいて限界があったという理由で。17世紀後半に作られたベルサイユ宮殿

の鏡の間のように、大きなものが作れるようになったのはかなり後。まだまだ、

高価な物であり、普通の人には高嶺の花であった。

 

初期のドレッシング・ミラーは、ただの枠付き鏡。装飾と言うよりは、鏡の

小口と裏側を保護するために付けられたものに違いない。それが、家具製作

技術の向上と共に箱に鏡がついた形へ変わっていく。

 

オランダで作られた物が、最初でと言われているが、きちっと年代が判る作

は知られていない。チャールズ1世の血を引くオランダ提督、ウイリアム

3世がイギリスで王に即位するに伴い、ヨーロッパの流行が流れ込んできた。

 

アン女王は、ウイリアム3世の義理の妹。スチュアート朝最後の王である。

家具史でも、この時代辺りに、オークの時代から、ウォルナットの時代へと

移行していく。重いオークから、明るく、軽やかな色のウォルナットへ。

 

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経年変化で、今はかなり暗く見えるが、新品の時はもっと明るかったに違い

ない。シンプルなバン・フィートと呼ばれるお饅頭脚がこの頃の定番。

 

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今では、同じ色に見えるが、ヘリボーンと呼ばれる、横向きのべニアがア

クセントに取り入れられている。

 

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引き出しの接合部は、蟻ほぞ組み。手工具だけ考えると、今、私が使ってい

るものとほぼ変わらないのではないかと思うぐらいのクオリティ。

 

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引き出しを、取り除くと、ウォルナットのべニアがパイン系の躯体に貼られ

ているのが判る。

 

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横から見ると、鏡を支えるアップライトが、少し後ろに傾いているのが判る。

テーブルの上に置いて、自分の顔を見ていた。引き出しには、櫛やら、髪飾

をしまっていたのではないだろうか。

 

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裏側も、ほとんどオリジナルが残っているように見える。箱部の背板はオーク

製。

 

ひとえに家具と言っても、3種類の違う材が、当然のように使われている。

コストのせいであったり、耐久性の為であったり、ちゃんと理由がある。

しかし、300年後のこの現代の暖房事情を考えて作られている訳でなないので、

この違う材の性質の違いが、割れや、反り、剥離をおこすことが多い。

 

これから、何年先を見据えて直していくのか?

 

果たして50年後には、修復と言う仕事は残っているのか?

 

未来に残せるものは何だろうと、一人思う。

 

 

 

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