Corner Washstand
コーナー洗面台
今の生活が当たり前すぎて、100年、200年前の生活を想像するのは難しい。
現在に残る建物や、家具、調度品等だけを見て、今と変わらないやとか、豪
華な物を使っていたと感じてしまうのは当たり前。
時間が経つと消えてしまう物、匂いの欠如と言うのは、過去を無機質な物に
変えてしまう。まあ、それを再現するととんでもないことになるのは想像が
つくが。
あの広大なベルサイユ宮殿に一つもトイレがなかったというのは有名な話だ
が、18世紀においても、その事実はあまり変わりはない。ある程度裕福層の
邸宅では、各ベッドルームと呼ぶ私室には、ウォッシュスタンドとか、ポッ
ト・カップボードと呼ばれるトイレ的な物が存在していた。
これは、残念ながら、上からマホガニーの板が付加されていて、本来あった
べき、洗面器を置くための穴隠されている。現代の生活には不向きな物は、
使い勝手の為に改造されている事は良くある事。
トイレに相当する、ポット、大概は陶器製の取っ手の付いた大きなジャグの
ようなもの。その下の扉の中に収納する。
勿論、ポットは存在しない。
ベッドルームで用を足し、そこへ仕舞う。召使いが定期的に、どこかへ持っ
て行き、始末する。18世紀の終わりにはテームズ川沿いの邸宅は、下水施
設が出来ていたようである。要は、川に流すだけの話だが。
その下の引き出しには、何を入れたのだろうか?
ブラシやちょっとした小物を入れていたに違いない。
一番下の貫の部分には、円形の挽き物が枠の様に張り付けてある。水瓶が
置けるようになっている。恐らくは、上に置く洗面器と下の水瓶、同じお
揃いのデザインで作られていたのだろう。
このコーナー用のウォッシュスタンド、どうもある時期にだけ流行った物。
マホガニーのべニア張り製に柘植材のストリンギング。もうこの頃には、
マホガニー材の無垢の家具はあまり存在しない。このデザインは、裕福層
が増えだした18世紀後半、トーマス・シェラトンの家具デザイン書が出版
された1790年以降に見られる。
しかし、20年後には、まったく作られなくなる。流行り廃りは時代の性。
今も、昔もあまり変わりはしない。
だが、造りのいい物はやはり残っていく、という事は間違いない。
ただ、想像して欲しいのはベッドルームの中の匂い、ひいては家の中の
匂い。外の匂い、川の匂い。正直あまり、想像はしたくない、、、。
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