壷型ナイフ入れ、再び
Japanese Export Lacquer Knife Urn Again!
江戸後期に出島経由で輸出された輸出漆器。その中で特徴的な形を持つ物がいく
つか存在する。この英語ではナイフ・アーンもしくはカトラリー・アーンと呼ば
れる壷型ナイフ入れはその一つである。
この完全なイギリスのデザインの形を持つこの家具。ある一時期しか作られてい
ないため時代の特定には持ってこい。ここまで完全コピーの西洋の形を持つ輸出
漆器は珍しいのではないだろうか。
それ故に、オークションで出てきても、日本の美術品の中にはあまり範疇されず
普通のイギリスの家具やヨーロッパの家具のオークションに紛れ込んでいるため
見逃されやすい。
このペアも、ロンドンのクリスティーズの「The Collector」というタイトルの
セール中の一品。
このペアが新出の物なのか、過去に市場に出て来ているのか調べてみると、面白
いことを発見した。
神戸市立博物館研究紀要第19号に掲載されている岡泰正氏の「青貝細工壷型ナイ
フ入れに関する資料紹介」の中に、現ペアとほぼ同じと思われる写真が載ってい
る。キャプションによれば、1995年にクリスティーズ・ニューヨークで出た物
らしい。
ところが、上のペアは2013年に同じくニューヨークのクリスティーズに出品され
たものだがカタログの解説に1995年にクリスティーズ・ニューヨークで出品され
た過去があるとの明記があり、どちらかが間違っているはず。
どちらがあっているにしろ、写真が残っている以上今回の現ペアは新出のものでは
ないということである。ただ、楕円横置きの風景画を持つ物はこれだけなので希少
という事は言える。
金具は銅製。鍍銀が全部とれてしまっている。
オックスフォードのアッシュモーリアン博物館の故オリヴァー・インピィ氏の
衝撃的な発見「壷内の墨書き」によってこの出島経由の輸出漆器が長崎製では
なく、京都製ではないかと特定された。さらに、木地師の名前「清友」。
この墨書きが確認されたのは、インピィ氏の確認した個人蔵の物とアッシュモ
ーリアン博物館蔵の2点しか今の所聞いたことがない。
現ペアにはこの墨書きがあり、「日本」、「青貝」、「清友」の字が確認出来る。
是非にも日本に里帰りさせてあげたい一品である。
落札予想価格は、150万円から225万円。
壷型ナイフ入れについて→記事
クリスティーズのオンラインカタログ
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