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2021/05/09

壷型ナイフ入れ、再び

Japanese Export Lacquer Knife Urn Again!

 

2021_cks_19798_0112_000a_pair_of_nagasak

 

江戸後期に出島経由で輸出された輸出漆器。その中で特徴的な形を持つ物がいく

つか存在する。この英語ではナイフ・アーンもしくはカトラリー・アーンと呼ば

れる壷型ナイフ入れはその一つである。

 

この完全なイギリスのデザインの形を持つこの家具。ある一時期しか作られてい

ないため時代の特定には持ってこい。ここまで完全コピーの西洋の形を持つ輸出

漆器は珍しいのではないだろうか。

 

それ故に、オークションで出てきても、日本の美術品の中にはあまり範疇されず

普通のイギリスの家具やヨーロッパの家具のオークションに紛れ込んでいるため

見逃されやすい。

 

このペアも、ロンドンのクリスティーズの「The Collector」というタイトルの

セール中の一品。

 

このペアが新出の物なのか、過去に市場に出て来ているのか調べてみると、面白

いことを発見した。

 

神戸市立博物館研究紀要第19号に掲載されている岡泰正氏の「青貝細工壷型ナイ

フ入れに関する資料紹介」の中に、現ペアとほぼ同じと思われる写真が載って

る。キャプションによれば、1995年にクリスティーズ・ニューヨークで出た物

らしい。

 

2013_ny_christies

 

ところが、上のペアは2013年に同じくニューヨークのクリスティーズに出品され

たものだがカタログの解説に1995年にクリスティーズ・ニューヨークで出品され

た過去があるとの明記があり、どちらかが間違っているはず。

 

どちらがあっているにしろ、写真が残っている以上今回の現ペアは新出のものでは

ないということである。ただ、楕円横置きの風景画を持つ物はこれだけなので希少

という事は言える。

 

2021_cks_19798_0112_001a_pair_of_nagasak

 

金具は銅製。鍍銀が全部とれてしまっている。

 

オックスフォードのアッシュモーリアン博物館の故オリヴァー・インピィ氏の

衝撃的な発見「壷内の墨書き」によってこの出島経由の輸出漆器が長崎製では

なく、京都製ではないかと特定された。さらに、木地師の名前「清友」。

 

この墨書きが確認されたのは、インピィ氏の確認した個人蔵の物とアッシュモ

ーリアン博物館蔵の2点しか今の所聞いたことがない。

 

現ペアにはこの墨書きがあり、「日本」、「青貝」、「清友」の字が確認出来る。

是非にも日本に里帰りさせてあげたい一品である。

 

落札予想価格は、150万円から225万円。

 

壷型ナイフ入れについて→記事

 

クリスティーズのオンラインカタログ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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