家具修復

2009/10/02

The end of Furniture Restoration??

家具修復の終わり??

サイズ10、1インチのネジがなくなったので、ストックを奥の
倉庫部屋まで探しに行った。いつも頼んでいるところから
来ている奴。箱のサイズ表示を確認して箱を開ける、、、、。

そこには、スロット(ドライバーを差し込む一番上の刻み)こそ
マイナスだったが、いわゆる木工用のネジの、スロットのある
頭の部分があって、その下にステムと呼ばれるただの鉄の丸棒
の部分があり、その下にネジが切ってあるネジではなく、建築用
の現場で使うような、ネジがスロットの頭のすぐ下まで切ってある
タイプの物が入っていた(左の箱のネジ)。

Blog5

ネジ屋の間違いかと思い、上の人間に確認すると、だんだん普通
の木工用のネジが手に入りにくくなってきたらしい。以前は真鍮製
のネジに関しては、あるサイズや、頭が丸いものは手に入らない
ので必要な分、削って作る事があった。それが一般のネジまで及
ぶと大変なことになる。

漆工の世界で、細い線を描く時の筆用のクマネズミの毛がもう
ほとんど手にないらないように、家具修復に使う道具や材料が
今後、どんどん手に入りにくくなっていくのではないだろうか。
顔料や染料に関しても、もう作らなくなってしまったものは多い。
そのうち修復なんてする家具は美術館や博物館でのみしか
見れなくなる日がくるに違いない。

Blog5

大概の修復屋は、まだ手でネジを切ってた頃の物はサイズに
分けて取ってあったりする。もう手に入らないので、そうやって
ストックしておくしかない訳で、今の木工用ネジまでそういう事を
しなければいけなくなる日は近い??

2009/08/27

Renaissance Wax

ルネッサンス・ワックス

Wax Polish #2」の項の最後でちらっと書いた
マイクロクリスタライン・ワックス。

Blog11

原油を材料とするパラフィン・ワックスの一つである。水素と
炭素の化合物である点はパラフィン・ワックスと変わらないの
だがナフテン炭化水素(Naphthenic hydrocarbons)、
イソパラフィン炭化水素(Isoparaffinic hydrocarbons)が比較的
多く含まれ、さらに含まれるクリスタル構造も小さく薄いため、
粘りがよく、伸びのあるワックスとなっている。化粧品処方として
一般に使われることが多い。

家具の修復で使われるマイクロクリスタライン・ワックスは
ルネッサンス・ワックスと呼ばれるもので、そもそも大英博物館
の科学者が、美術館等の展示物に既存のワックス
(ビーズ・ワックスやカナルバ・ワックスが主原料)は酸を塗布した
表面上に残すため、その物のオリジナルのフィニッシュに
ダメージを与える可能性があることを発見し、何か中性の表面
をうまく守る代用品はないかと考え出されたのがこのワックスで
ある。

pHは7で中性。退色の恐れもない。既存のワックスの最大の特徴
である表面を守る耐水性も備え、ハンドリングに伴う手の油など
の汚れや空気中に含まれる汚染物からもその物を、きちっと
守ることが出来る。

しかし、その構造上かなり薄く塗布できるため、既存のワックスを
塗った時の輝きを再現したいならば、何十回も塗布しなければ
いけないのが難点か。

私自身は家具自体にあまり使うことはないが、オルモルなどの
金属のマウントやマーブル等を保護するのに使用されることが
多い。

ルネッサンス・ワックス販売元
Picreator Enterprises Ltd.

2009/07/28

Wax polish #2

ワックス仕上げ その2

ビーズワックス(Beeswax)は名前の通り、蜜蜂によって作られる。
とはいえ、あえてワックスを作っていると言うよりは、蜂蜜を作る
際に出来るもので、蜂の巣を洗う事によって取り出し、温めて
水分と分離させ取り出す。

色はどんな花粉を蜜蜂が集めて来たかによって異なるが、一般
に1番薄い色は白、濃い物は黄色である。黄色い物を漂泊する
ことによって白くしたりも出来る。

このビーズワックスの最大の特徴は水に全く溶けないと言う事で
ある。それ故に、家具の表面に塗る事によって塗膜を作る。しかし、
融点が低いが故に磨けば磨くほど、摩擦熱によって溶けだし、
思ったほどの光沢は得られないと言う事になってしまう。

そこで考えられたのが、ビーズワックスより高い融点を持つ違う
ワックスと混ぜ合わせると言う方法。選ばれたのはブラジル産の
カヌーバ椰子から採取されるワックス。ワックスの仲間の中でも
1,2を争う高い融点を持つ(84度から91度)。ただし、ブラジル
から輸出されだしたのは1845年頃からなので、家具用のワックス
として使われだしたのはヴィクトリアの時代からと言えるだろう。

その混合物でも、まだ家具に塗るには硬いので、テレピン油で
軟らかくしてペースト状にした物が、今現在市販されている
家具用ワックスの原型だろうと想像出来る。塗られたワックスは
しばらく置いておくことにより、テレピン油が揮発しワックス分だけ
表面に残る。そして磨きあげて仕上げとなる。

トーマス・シェラトン(Thomas Sheraton 1751-1806)の
"The Cabinet Directory"(1803年出版)ではビーズワックスを、
コルク製のブロックで均して磨く、仕上げ方法が取り上げられて
いる。

その他にも、原油から作られたパラフィン・ワックスの仲間である
マイクロクリスタライン・ワックス(Microcrystalline Wax)等が
家具修復に於いて使われる。

2009/07/25

Wax polish

ワックス仕上げ

Blog10

ワックスを使って家具を磨くという行為は、かなり昔から
行われてきた。18世紀以降、ヴァーニッシュやシェラックが家具
の仕上げで使われ始めた後も、最後の仕上げにはワックスと
言うのが当たり前だったようだ。

一般に市販されている家具用のワックスと言っても、数多くが
存在する。大概はビーズワックス(Beeswax)と
カヌーバ・ワックス(Carnauba wax日本ではカナルバ・ワックス)
を混ぜ合わせ、テレピン油(Turpentine)の代換品である
ホワイト・スピリッツ(White Spirits)で扱いやすく軟らかく
ペースト状にした物を言う。

ものすごく硬いカヌーバ・ワックス(84度から91度で溶解)と、かなり
柔らかいくビーズワックス(61度から65度で溶解)を混ぜ合わせる
事で仕上がりの硬さを調整する。ワックスを塗ると言う事は、
家具の表面上に塗膜を作ると言う事に他ならない。家具にとって
の一番の天敵である水から守る為。混ぜたものが硬過ぎると、
磨き上げる時にとてつもない苦労を要する。エルボー・グリース
(←家具から来た言葉ではないと思うが、ワックスで家具を
磨き上げる時のハードワークから来たものかも知れない。)
なんてものではない。メーカーによっては異様に硬い物から
柔らかい物まで存在する。

日本でも良く見るに、「Briwax Original」と「Liberon Waxes Black
Bison Fine Paste Wax Polish」(写真一番上右)がある。かなりの
色のヴァリエーションが有りパインの家具には薄い色、オーク系
には濃い目と使い分けることが出来る。ただ、結構柔らかい。
磨き上げるのはそれほど難しくないが、仕上がりの艶も
それなりにしか期待出来ない。

私が個人的に使っているのは「Harrell's Traditional Wax Polish」
(写真下部)の物。「Black Bison」に比べたら、それほど色の
ヴァリエーションはないが良い輝きが期待出来る。
「Fiddles Supreme Wax」も捨てがたい、が、磨き上げが異様に
大変である。

ビーズワックス、カヌーバワックス、ホワイト・スピリッツ以外は
何が市販のワックスに入っているかわからない。詳しいことは
企業秘密のようで、もし時間があれば自分で作ってみるという
のも悪くないかもしれない。

2009/07/17

Stick them on !! その2

貼り付けろ!! その2

前の記事からの続き、、、、。

そんな訳で、フレッシュな膠を作った。

Blog7

あまりかき混ぜ過ぎると、空気が入ってしまって、泡になって
表面に浮いてくる。とろっと美味しそうな感じが一番良い感じ。

この出来たての膠、恐らく粘着力は最大である。故に、
セッティング・タイム(Setting Time なんて訳すのだろう?? 
くっつき始めるまでの時間、つまりこの時間が作業時間になる)は
異様に短い。このグルー・ポットと呼ばれる容器から刷毛に付け
て外に出した瞬間から、凝固を始める。ものの一分もしないうちに
膠はゼリー状になり液体ではなく、個体へと変わる。もう使えなく
なってしまう。

この作業時間を延ばすために、膠にもう少しお湯を足して柔らかく
するか(あまりやりたくないが)、膠の塗装面にお湯を付け、水分と
熱を与えておく。湿気と熱に対して溶解する膠は、これで少し長く
液体の状態でいる。詰まり作業時間が(ちょっと)長くなる。

ばらばらの椅子を組み上げる時なんかは大わらわである。大体
の場合は、糊を入れずに借り組みをしておく。どのようにハタガネ
をかけるか、何を気をつけないければいけないか、
シュミレーションをしておかないとパニックに落ちいる。

椅子をばらして、簡単に古い膠を除去して、大丈夫だろうと高を
くくって、組み上げ初めて、ある接合部が上手く入らなくて時間を
取り、パニック陥り、挙句の果てに、貫を逆さまにはめてしまった、
なんてこともあるのである。

良い事に、確かに新鮮な膠の接着力は最大であるが、水溶性で
ある為、最終的には何とか外す事が出来るのである。ただ、
ちょっと自己嫌悪に陥るが、、、、。

「新鮮な膠には気をつけましょう。」

前の記事↓
*Scotch Glue
*Scotch Glue #2

2009/07/14

Stick them on !!

貼り付けろ!!(?)

フランスの家具、18世紀後半と思われる小さな書き物机
(Writing Table)。オークの躯体の上にローズウッドと
チューリップウッドのベニアが膠で張り付けられている。

表面を軽く、指で叩いていく。トン、トン、トン。

時に一音程下がったようなスカッと抜けた音が出る時がある。

ベニアの裏の膠が何らかの原因で剥がれ、躯体との間に空気
の層が出来ているとそんな間抜けな音を奏でる。

家具全体を叩いていく。抜けた音の所には、マスキングテープを
小さくちぎって、その上に目印として貼っていく。

終わってみると、優に100は下らないマスキングテープの目印。
間違いなく、躯体上の半分以上のベニアは浮いているに違い
ない。躯体が縮んだか、はたまた膠の寿命化。確かに、ベニア
の裏に着いた膠は結晶化していて粘着力は失われている感じ。

しかし、ここまで一挙に来るのはあまり経験がない。直射日光に
当てすぎたか、暖房の近くに置いてあったか。

Blog5

まあ、こういうときの作業は単調でただただ張り付けていくしか
ないのである。

2009/06/04

立って彫る、座って彫る、脚立の上で彫る

家具の修復をしていると、時に普通の家具製作では絶対に
起こりえないことが起こるものである。

普通、テーブルの脚の先の、俗にライオン脚(Paw Feet)と
呼ばれる彫刻を施す時、脚自体を長手方向にサッシュクランプ
等で挟み、そのクランプ自体を作業テーブルの上に付いた万力
で固定をする。脚の一番上、脚の底は平らなのでしっかり固定
が出来る。

しかし、すでに組み上げられたテーブルになっている場合。
そのものを取り回すのが著しく難しいのが予想される。

Blog6

マホガニーのコンソール・テーブル(Console Table)。大概は壁に
付けて置かれる。天板はマーブル。貫無しの、シンプルな4脚の
テーブル。運良く、バック・ゲートと呼ばれる、後ろ脚2本と
マーブル天板が乗る天枠部の後ろ側のレールが外れた、が、
フロント・ゲートに両サイドのフレームはしっかり糊付けされていて
外れそうもない。

ライオン脚の両側、もともと木を継ぎ足さされていた部分が、
まんまと両側とも欠損。新しく材を継ぎ足して彫る訳だが、この2m
近いテーブルを縦にして固定しないと、足の側面が上に来ない!!
内側の時は座って彫り、外側の時は一番上に来るので、脚立に
乗らないと届かない!!

そして何とか彫りあげた後、水性のステインで仮の色を付け、刷毛
でポリッシュの捨て塗りをする。液体分を含んで膨らんだ木が、
水を含ませた時と違って、そのまま固まる。捨て塗りする前は元々
の部分と新しく付けた所に段差はないが、捨て塗り後、また若干の
ズレが生じる。それをもう一度削り込み仕上げていく。

Blog5

完成までもう一歩。

普通、レストアラー(家具修復士)はキャビネット・メーキング
(家具製作)を経験してきているので、時間こそかかれど、大概の
物は作れる。しかし、こんな時もあるのです。

2009/01/11

ペイントの除去

Paint Removal

先日、ある雑誌を覗いていたらこんな記事が眼についた。

「Paint Removal」

この雑誌は、The Listed Property Owners Clubから発行
されている季刊誌"Listed Heritage"と呼ばれる物。もちろん
家具の雑誌ではない。

イギリスでは、歴史的にもしくは文化的に何か特別な建物、
構造物に対し、国(地域)としての文化遺産を守るという目的で、
文化財(保存物)として指定される。とはいってもピンキリで、
Grade I と呼ばれる、基本的には外装内装とも手を加えては
いけないものから、Grade II、と呼ばれる外装のみを保存すれば
よいというものまで様々存在する。

つまりListed Propertyと言うのは、その文化財、準文化財等に
指定された不動産の事を指す訳である。したがって、たかがDIY
の類のようなものでも修復・保存的な傾向が著しく強い。

このペイントの除去、赤外線を使うものである。家具でもそうだが
ペイントの除去と言うのは多大なる労力を要する。大抵の場合は
剥離剤を塗布(もしくは、ヒートガンと呼ばれる専門のドライヤーで
焙る)し、柔らかくなったペイントを除去、それを何度か繰り返し、
洗浄、木材表面の調整等を必要とする。さらに、近年ことうるさい、
会社の責任としての安全面の徹底、有害物質を扱う時は、マスク、
ゴーグル、グローブ、換気の良い所での作業。その作業によって
生じる有害廃棄物、そしてその処理。特にEUに属する国々に
とっては、その手の事がことのほか厳しくなってきているのが現状。

1980年後半頃から、スウェーデンの専門家がより安全で
エコ=フレンドリーな方法として発展させたこの方法。木材の中の
樹脂やペイントをを赤外線で温めることにより外へ引き出す。
それによってもともとの木の表面を傷つけることや焦がすことなく
除去し、そしてその作業の後、すぐ次へ移れると言う作業効率の面
でも優れている。

この方法が、すぐ色々な状況の家具の修復に応用すると言う訳
には行かないだろうが、面白いアイデアであることには間違
いない。そのうち、Health and Safety(健康と安全面)が過剰に
行き過ぎると(欧州では行く可能性が多大に存在する)、雇用人の
健康を害すると言って、全ての剥離剤などは禁止されてしまう
かもしれない。そうすると、この方法が唯一の方法なんてことも
あり得るかも知れない。

いつまでオンライン上にあるかわからないが、直接この記事が
読めます。p51より。→ここ


2008/11/16

Coromandel Lacquer

コロマンデル・ラッカー

西洋でコロマンデル・ラッカー(またはバンタム・ワーク)と
呼ばれる装飾がある。インド南部のコロマンデル海岸から
船に積み込まれヨーロッパにもたらされたことに起因する。
イギリス東インド会社もコロマンデル海岸沿いの港町マドラス
(現チェンナイ)に拠点を置き、セント・ジョージ要塞を築き
東西貿易の中継地点とした。

コロマンデル・ラッカーと呼ばれてはいるが、これはインドで
作られたものではなく、中国産で生産されたものである。その頃
の中国は、明(1368~1644)の後期、そして清(1644-1912)の
前期と激動の時代。ヨーロッパのルネサンス、羅針盤の発明
から始まった大航海時代によって、遠くアジアにもヨーロッパの
船が渡来するようになる。中国のシルク、陶磁器や日本の漆器
などを求め、イギリス、オランダが東インド会社を設立したのも
この頃の話。

Blog2

日本語では彫漆(ちょうしつ)と呼ばれるカテゴリーの存清(星)
(ぞんせい)と呼ばれる技法のようだ。木地の上に煉瓦の粉、
豚の血、生漆を混ぜたものを重ね、層にしていく。厚みが
数ミリメートルまで積み上げられた後、大概黒か茶の仕上げ漆
を塗り、その後、デザインを彫っていく。そして彫った所へ、色漆、
もしくはオイル・ペインティングで着色していく。出来上がりは
まるで、木版画を見ているような感じになる。(もともとのアイデア
は木版画のようだ。)

家具の装飾として見ることはあまり多くはないが、ヨーロッパへの
輸出用でかなりの数のコロマンデル・ラッカーで装飾された屏風
が作られた。大抵は2メートル近い高さで、6枚もしくは8枚のかなり
大面積の屏風である。その前に立つと、まさに色彩に圧倒される
感じである。これは博物館などで見ることが出来るかも知れない。


2008/11/08

French Polish

フレンチ・ポリッシュ

フレンチ・ポリッシュと言う言葉をアンティーク家具屋さんで
聞いたことがあるかもしれない。そもそも、フレンチ・ポリッシュ
って何だ??という疑問が湧く。

あまり古いものはわからないが、17世紀オークの時代の家具は
仕上げるのにワックスやオイルベースのヴァーニッシュ(Varnish)
使われてきた。ヴァーニッシュは亜麻仁油(Linseed Oil)等のオイル
にコパール(Copal)やロジン(Rosin)等の木や植物から採取された
樹脂を溶かして使われていた。これでかなり頑丈な塗膜が表面
に出来るはず。しかし、唯一の欠点は乾くのが異様に遅い事。
チークオイルなんてのは完全に乾くまでに数カ月を要するので
表面は絶えずぺたぺたしていたはず。逆に言うと、耐水性が付き
汚れなども付きにくいはず。

そこで1700年頃から、主流になりだしたのがスピリッツ(アルコール)
ベースのヴァーニッシュ。この頃から、家具の製作も
キャビネット・メーカー(Cabinet Maker)と呼ばれる専門の職人が
作り始めているので、作業効率が重視されて、乾きが速いのが
重宝されたかもしれません。その中で、一番有名なのがシェラック
(Shellac)と呼ばれるある虫から作られる樹脂を溶かした物。

そして19世紀に入り、フレンチ・ポリッシュが登場します。
フレンチ・ポリッシュとは技法の事。フランスで主流だった鏡面仕上
に近いピカピカに表面を仕上げる方法。タンポ(Rubber)を使うのが
特徴で木目の導管を埋めていくのにパミス・パウダー
(Pumice Powder)や煉瓦の粉などを表面に振り撒き、それを
タンポで押し入れながら仕上げていきます。イギリスでは、
あまりにも表面をテカテカにしてしまうこの方法は好まれなかった
よう。

Blog4

フランスの19世紀後半の小テーブルの天板。よく見ると、導管が
白く目立ってきているのがわかります。長い間に、導管に埋めた
パミス・パウダーが乾き、白く浮き出してきてしまいます。さらに
長年紫外線にさらされてきた塗膜の色の劣化。透明に近かった
ものがだんだん白濁していきます。亜麻仁油なんかも一緒で
時間が立つとどんどん黄色くなっていきます。右斜め下が
アルコールで軽く洗った所。マホガニーのもともとの色がしっかり
出てきます。

いくら昔、オイル・ヴァーニッシュを施されていても、塗膜がずっと
持つはずではなく、時代時代に新しく化粧直しをその時の技法で
され続けてきています。そういうのを見ると、いつその家具が
直されたのか推定するのに役にたったりします。

2008/06/20

Upholsterer's Trap

椅子張り職人の罠!!

家具の修復と言う仕事上、椅子に張ってある、擦り切れた、
汚れた、または購入後の顧客の趣味により布地、中身をはがす
事がある。8脚組みの椅子なんかを剥がす時には、何百、
何千ものタックス、ステイプルをはずす、もの凄く単純作業の繰り
返しなので、思いっきりのめり込めて、頭が真っ白になれるので、
個人的には意外に好きなのである。

座面の下縁のブレイド(braid 日本語ではなんて呼ぶのだろう)、
もしくは鋲(Stud)をはずし、裏のダストカバー、座面のトップカバー、
下のスッタッフィング(Stuffing)、力布(ウェビング Webbing)の順に、
留めてあるタックス(Tacks)、もしくはステイプル(Staples ホッチキス
のガン)を取り除き、剥がしていく。骨だけになった椅子のフレーム
を見るのは、結構好きである。

Blog1

上は、椅子張りを剥す時に使う道具。鋲なんかは真ん中の刃を付け
てない鑿とお手製の木槌(Mallet マレット)を使いはずしていく。
一番下はステイプル・リフター。名前の通りホッチキスの弾のような
ステイプルを押し上げる道具である。

そして、椅子のフレームにガタや損傷があれば直し、今度は
椅子張り職人の所へ送られ、新しい布地、使えるスッタッフィングは
使い、足りない所は、新しい馬毛で補充し、お色直しがされる。
詰まる所、椅子の修復・修理と言うのは、修復士(Restorer)、
椅子張り職人(Upholsterer)のコラボレーションにより達成されるもの
なのである。

が、いつもいつもそういうラッキーなケースばかりではない。

大概、修復士と椅子張り職人は独立した物なので、椅子の張替えで
直に椅子張り職人に持ち込まれるケースがある。そして剥してみて、
発見するのである。

Blog2

椅子をフレーム状態にすると色々な事がわかる。過去に何回
張替えがされただの、以前は鋲で仕上げてあっただの。上は、その
8脚組みの1脚のアームチェアーを右サイドからアーム・サポート部の
すぐ後ろの部分を録った物である。左端にマホガニーの
アーム・サポート。座面枠はブナ材。虫食いと過去の椅子張りの
タックス跡で結構酷い状態。以前鋲を打ってあった下縁は鋲の
連なりに沿って見事に、割れている。すでに、大鋸屑と膠を練って
作ったパテで虫孔、タックス穴等は埋めてあるが、さほどの補強に
なってはいない。

ヘシアン(Hessian 荒い黄麻布)を留めたタックス、馬毛をくるみ、
ステッチを施されたスタッフィング、追加の馬毛、トップ・カバー下
のカリコ(Calico 木綿さらさ、布)。

布地を張ってしまうと、全て隠せてしまう為、時には酷い直しを見る
こともある。剥がして、ガタがあるのを発見し、接合部に螺子を
打ってしまう。ガタのある接合部の境目を跨ぐ様に何十本もの
ステイプルが打ち込んである。挙句の果ては、ステイプルと呼ぶ
には、凄い5cmほどもある奴を接合部に打ち込んでみたり、と
椅子張り職人も凄い事をするのである。

まあ、剥がして、ガタを発見しました、また顧客に伝えて、
修復・修理をどうするかを確認して、なんてやっているよりは、
ちゃっちゃっといんちきでも直して、張って、納品して、お金貰う方
が効率は良い。ただ、そういう扱いを受けた椅子達にダメージが
残る。そうしていい加減に直された椅子達はその歪で違う所が壊れ
ていく。

椅子張り職人だけでなく修復士も似た様な事をしてたりするケース
もあるので、どっちもどっちだが、おくるみの椅子を買うときは、
そういう事もあると言う事を覚えていた方が良いかもしれない、、、。
もしくは、フレームだけの椅子を買って好きな布地を張ってもらう
ほうがよっぽど安心できるかもしれないなあ、なんてことを
思ったりもする。

 

2008/05/31

Bramah Lock

ブラマー錠

家具を修復すると一言で言っても、何も木ばかりを始終扱って
いるわけではない。木を主材にした、様々な金属(真鍮、
ピューター、ブロンズ、銀)やオーガニックの素材(鼈甲や象牙)
を使った集合体である工芸品と私は思っているので、鉋や鑿
を全く使わない日もあったりする。

特に錠・鍵は、兆番や取っ手と並んで、家具にずっと使われて
続けてきた金属製のパーツ達である。鉄、銅、真鍮と使われて
きた素材は様々で、イギリスでは17世紀ぐらいまでは主に鉄系の
素材、18世紀に入って、装飾的な意味で見えるところは真鍮が
使用されるようになってきた。

住宅用の物は、物によってかなり違うが、家具に使われるタイプ
の錠は、まずタンブラー・ロック(Tumbler Lock)と呼ばれる、鍵を
回す事によってスプリングの部分を押し上げ、ボルト部を押し出し
施錠をするタイプの物であった。しかし、一度構造がわかって
しまえば、直すのにそれほど手間がかかる訳ではない。その当時
もそうであったのだろうか、それとも人々が高価な物を所持する
ようになったのかタンブラー・ロックから発展型の錠が発明される。

1778年、ローバート・バロン(Robert Barron)が発明したバロン錠。
これは今現在のレバータンブラー錠の原型に当たる物で、従来
のタンブラー式の発展系である。そして1784年にジョセフ・ブラマー
(Joseph Bramah)が発明したブラマー錠である。

そもそも、このブラマー氏、若い頃は木工を習い、家具職人とし
てロンドンに出て行く。1748年生まれの彼が30歳の時、発明家
として一つ目の特許を申請する。トイレの貯水タンクがそれである。
冬の寒い時期になってしまうと凍ってしまうタンクの水の排出口を
兆番付きのフラップに交換した。このデザインは19世紀のまで
使われ続ける事になる。

恐らく好奇心が旺盛であったろう彼は、鍵に関する講義に幾つか
参加し、その後自分の為に、鍵をデザインする。そのデザインが
あまりにも斬新だった為、その特許を取り、さらに自宅のあった
ロンドンのピカデリー通り124番地にブラマー錠前商会(Bramah Lock
Company)を始め、今現在もその場所に、その会社は存在する。

Blog

このブラマー錠、修復士泣かせの一品である。以前一度、鍵を
作るのをトライした事がある。円柱状の先が7つの歯の様に
分かれていて、バラバラの高さのパターンになっている。そこを
ばねが仕込んである錠に押入れ、そのギザギザが合うと、鍵を
回せる所まで押し込めるという構造である。

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さあ、その構造をあまり良く知らず、錠のカバーについている2本
の螺子を抜いた瞬間、押されていたばねが弾け、中のパーツ
が全て弾けとんだ!! とまあ、その後は全てのパーツを見つけて
事なきを得たが、あれは過去の多くの失敗の中でも思い出
深い物。

このブラマー錠、その当時の高価な家具に良く使われている。
特にリージェンシー時代の物。錠自体の値段も高かったに
違いない。その錠がオリジナルで付いていれば、その家具は、
間違いなく1784年以降の物と言う事が出来る。今現在、
ブラマー錠前商会は、錠そのものは作ってはいない。が、商会が
作った錠前には品番が打ってあるので、いまだそのオリジナルの
鍵を作る事が可能である。決して安くはないが、有難いことでは
ないだろうか。

2008/03/18

Adhesive

粘着する物、接着剤。

家具の修復には、膠意外に結構多くの接着剤を使う。
ざっとここに書き上げてみようと思う。

天然系
*膠(Animal Glue, Scotch Glue, Hide Glue)
 他の記事参照

*ラビット・スキン・グルー(Rabbit Skin Glue)
 その名の通り、ウサギの皮から取った接着剤。粘度は膠
 より弱く、乾いても完全には固形化しない為、ギルディング
 (金箔張り)に使用。

*フィッシュ・グルー(Fish Glue, Isinglass, Sturgeon Glue)
 これに関しては、実際使った事は無いのであまり書けず。
 ラビット・スキン・グルーより粘度が低く、固形化しない為、
 木に木以外の物を接着するときに使用。ただし、あの
 キャビアを取るチョウザメの膀胱から作られる為、とても
 値段が高い。

*タイトボンド社リクイッド・ハイド・グルー
 (Titebond Liquid Hide Glue)
 アメリカのタイトボンド社から出ている物。普通は暖めて
 液化する膠が常温でボトルの中に液化状態。そのため、
 どこでもその場で使用可能。硬化し始めるまでの時間が、
 膠に較べると長いので複雑な接合などに使用。

*壁紙糊(Wheat paste) 
 要は澱粉糊。日本の障子紙の糊と同じ物だと思う。
 カードテーブルなどの天板部にフェルトを張るときに使用。

PVAc系
*酢酸ビニル樹脂エマルジョン(PVAc(Polyvinyl-acetate))
 一般に木工ボンドといわれる物。イギリスでホワイト・グルー
 と呼べばこれを指す。膠よりは耐水性が高いので、部材
 の破損部などに使用。

有機系
*タイトボンド社オリジナル・ウッド・グルー
 (Titebond Original Wood Glue)
 (脂肪族系樹脂エマルジョン(Aliphatic Resin Emulsion))
 脂肪化合物とは有機化合物の一種でアルカン、アルケン、
 アルキン、あるいは、その環状化合物などをいう、とある
 のだがもう少し理解が必要。使用は上に同じ。

シアノアクリレート系
*アロンアルファ、瞬間接着剤
 削り取る意外除去出来ない為、あまり修復には向いて
 いない、が、家具表面に触りたくない場合(金箔張りなど)
 等、特殊な場合に使用。

ポリマー系
*パラロイドB72(Paraloid B72)
 ポリマー樹脂なのだが無色透明、時間がたっても
 変色せず熱、酸、水、アルコールに強くアセトンやエタノール
 に溶解。この特性から修復界では広く使用されている。
 主に、剥離しがかっている塗装面やジェッソ(Gesso、
 箔張りの際の下地)等の強化に使用。木以外の物に対し
 接着剤としても使用すること有り。

2008/03/15

Scotch Glue #2

膠 その2

この21世紀の今でも、古代エジプト時代から家具製作に
使われている膠が家具修復で使用するメインの接着剤。
水可逆性であり、除去するのに水以外のものを使う必要
がないという点が一番の利点である。

しかし、修復において終始、膠を使うわけではない。

膠は木のように多孔性(または浸透性)の高い素材に対
しては、良く接着するものの、多孔性ではないものに対して
の粘着強度は格段落ちる。そのため、油分の強いベニア
や多孔性ではないもの(金属や象牙等)に対しては、
Toothing Planeと呼ばれるかんなを使い表面に満遍なく
傷をつける。

Plane

Plane2

このかんな、普通のかんなより刃の角度が深く、ほぼ
直立している。一見、普通のかんなのようにも見えるが、
刃がツーシングと言うように鋸の刃のようにぎざぎざに
切ってある。

つまりこのかんなを掛けると、大体10本から20本ぐらい
の等間隔の刻み線が木の表面上に引ける、そういった
凸凹を英語では「Key」と呼び、引っ掛ける物と(多分)訳す。
様は、接着面積を大きくし、接着強度を上げようとする試み
なのだが、これがあるのと無いのでは大違い。膠を接着剤
として使ったベニア張りの家具ではかなりの確立でされて
いるので目にする機会もあるのでは。

追伸:家具修復に一般に使う接着剤を紹介しようと書き始めた
のだが、また膠の話になってしまいました、、、、。

2008/03/05

Scotch Glue

スコッチ・グルー

スコッチ・グルーと書くと何のことだと思うけど、膠の事です。
アニマル・グルーとも言うけれども、やっぱり同業者は
スコッチ・グルーと呼ぶかな。

動物の獣皮やひづめから作られた糊。実はコラーゲンが
たっぷり。舐めてみるとお肌に良いに違いない??

この糊、数千年前のエジプトの時代から家具を作る際に使われ
てきた優れもの、20世紀に入って、合成の糊が登場したけれど
もそれまでは、基本的に家具といえば、これで接着されて来た。

僕が使っているのは、グラニュール・タイプの物。その形状から
パール・グルーとも言う。熱する前に、水に漬けて、ふやかして
置いてから、火にかける。大体60度前後で溶解。どろどろでも
ない、さらさらでもない、丁度良い濃度にお湯を加え調整して
から使用する。

何と行っても、膠の最大の利点は水溶性であるため、除去する
のが楽と言う事。その反面接着力に難があるというか、接合部が
しっかり面と面で無いと、接着力が極端に落ちる、更に衝撃に弱い
等の短所もある。が、修復の観点から見れば、変にがんばって、
接合部を壊す今の合成の糊よりは、ある程度劣化してきたら、潔く
パキッと外れる膠の方が良いような気がする。

ヴィクトリアン中期頃から使われ始めた、ダボ。機械生産が本格化
し始めた頃に登場した、新しい接合法。しかし、悲しいかな、膠との
相性はあまり良くない。と言うよりは、接合部の接する面積が圧倒的
に少ないため強度が足りない。接合部がぐらぐらするのだが、うまく
はずれず、結局はダボが折れてしまう(折ってしまう)。

それでも、毎朝、膠のグルー・ポットのスイッチをオンにするのは
家具修復士の日常也。

Scotch_glue

2008/02/25

West Dean College

ウエスト・ディーン・カレッジ

先日、ウエスト・ディーン・カレッジの家具修復科のチューター
にあった。

僕が卒業したのが、99年だから、メールでのやり取りや、電話
では何度か話した事はあるが、面と向かって合うのは本当に
卒業以来8年ぶり。

このウエスト・ディーン・カレッジ、一昔前まではイギリスで家具
修復の学校と言えば、一目置かれた存在であった。しかし、今
では他の学校も力入れて来ていて、あまり抜き出た存在では
なくなった感じ。

彼はドイツ人である。が、基本的に語学体系が英語と似ている
せいか、あまり問題はないようである。ドイツ人が全てと言わな
いが、日本人に似て勤勉、彼の場合は勤勉すぎて、生徒と良く
軋轢を起こしていたのを思い出す。

悪い人ではないが、時に熱くなると、突っ走っていってしまうタイプ。

その彼から、コースで今度からMA(修士)が取れるようになったと
聞いた。これは大きいと思う。

とかく、古い修復士連中は学歴的なものに対しては「フン!!」と言う
態度であるが、世界的な傾向としては学歴なくしては修復士として
の未来は無いと言う感じになりつつある。

フランスなどでは、ある程度の学歴がないと、良い家具に触れなく
なってしまうらしい。

さらにもの凄く狭い世界であるが故に、学術的な面(どの
コンファレンスで発表しただのの事)が重視されてしまうのは
しょうがない事なのだろうか。

技術、学術両方に長けた人が、ベストだと思うのだが、、、。


2008/02/17

UV-VIS- Spectrometry その2

UV-VIS- Spectrometryの講演に行って来た。

少量のサンプルを現物から削りだして取り、顕微鏡等で解析
すると言う方法は、絵画などの修復では広く行われる事であるが、
作品から、オリジナルのマテリアルを、少量ではあるが、取得しな
ければならない。

しかし、この方法は、分光器に繋がれた3cmぐらいの光源とカメラ
のような装置で表面上から、ピンポイントでその場所の、染料や
顔料を解析出来る。

この分光法、辞書によれば「物理的観測量の強度を 周波数、
エネルギー、時間などの関数として示すことで、対象物の定性・
定量あるいは物性を調べる科学的手法」とある。つまるところ、
対象物から放射された電磁波を測定すし、それをサンプルと
比較する事により、対象物が何であるか特定する。

今の所、このデータベース、ドイツの学術機関2箇所とウィーン
の一箇所が合同でこの手法のデータベースを構築中という。
結局、比較する所のデータベースがないと話しにならない。
解析自体はほぼ手作業で数日かかるものではあるが、9割以上
の確立で確かである事が確認されていているという。

18世紀後半のドイツの家具作家David Roentgen(何度聞いても
彼の名前は発音出来ない。レントゲンの発明者のレントゲンさん
と同じです。)、彼の使った染料の中には彼しか使わなかった
物があるという。そうすると、この染料が使ってあるかないかで、
その家具が彼が作った物かどうかがわかる。

そんな使い方は稀であるが、まだまだいろいろな方法に応用
出来そうで楽しみであるが、まだまだ学術的な試用の段階、
1ワークショップが導入して、使いこなすにはかなりのコストに
なりそう。

2008/02/08

Puzzle! Puzzle!!

パズル! パズル!!

出来上がりの絵の無い、ジクソーパズルを想像してみよう。

出来ないとは思わないが、かなり時間を喰う事が予想される。
多分、バックグランドと何かがある物を区別して、さらに、その
何かある物の中でさらに、同じ色や同じ柄のような物を集めて
いく。

家具の話と全く関係ないようだが、全くそうでもなかったりする。

家具が壊れる時の多くは運搬中である。使用している時に、
壊れるなんてのは、大体予想出来る。が、運搬中、例えば、
引越しだったり、単に隣の部屋へ、または近所へ移動する時だ
ったり、、、、。

年に数回、何でそんなに壊れるのってぐらいにばらばらになった
家具と遭遇する。湿度計の木製枠のガラスケース。紫檀で
出来た恐らく中国製の、ミニチュア・デスク・キャビネット。
そして、今直面している、ドイツ製の部分金箔張り、部分
塗装されているコンソール・テーブル。

もともと、このテーブルには足が無い。フレーム自体を直に壁に
取り付けるタイプ。その上にマーブルの天板が載る。

その壁への固定が甘かったのか、天板の重みで、テーブル枠が
コテンパンに粉砕した。

Blog2_2

家具の取り扱いには、くれぐれも気を付けましょう。
椅子を、踏み台替わりに使って、壊した人を何人も知ってます。

2008/02/07

UV-VIS- Spectrometry

紫外・可視分光分析

UVはUltraviolet、紫外線、VISはVisible、可視光線の事。
これらを使って、分光分析をすると言う物。

こんな説明では、なんのこっちゃって感じですが、要は、紫外線、
可視光線を使って、塗料内または木部内で使用されている顔料や
染料を明らかにしてしまおうと言う試み。

そして、その特別講演がドイツ、ミュンヘンの家具保存修復センター
の Dr. Heinrich Piening によって行われるます。

場所はロンドン、ウォラス・コレクションにて3時より。
入場は無料。

個人的に、この方法にはかなり興味があります。家具のマルケトリー
には、そのままの生の色ではなく、染色して使われている物が
かなりあります。特に、青や緑は自然界の木から取れない色なので
どんな染料を使っていたのかは、とても興味深いです。

イギリスでもヘアウッド(Harerwood)と呼ばれる木があります。
たいていはシカモア・メープルを緑に染めた物と解釈されています
が、その緑が何を使って染めているのかは、僕ははっきりと
知りません。

絵画でも顔料を見ると、色々な事がわかると言います。これで、また
家具への洞察が深くなると面白いです。

注:ただしこの講演の話は、ウォラス・コレクションのHPには書いて
  ありません。

2008/01/08

漆塗り提げ重箱

漆塗りの提げ重箱。

黒漆のバックに金、銀を使った平蒔絵、高蒔絵、梨地の装飾。
江戸の中期頃の物。

日の当たる所にディスプレイしてあったのか、埃に
恐らく蜘蛛の糞。上の黒漆の色が透けた赤茶のように
見える。

日本の国立美術館ではかつて、蒸留水にアンモニアを
一滴垂らした溶剤をクリーニング用に使用していた
そうである。(今、現在はわかりません。)

基本的に漆器の保管の仕方が違う日本と西洋。使ったら、
しっかり洗い、水気を拭き取り、布に包んでしまう日本と、
どうだーっ、とばかりに部屋に飾ってしまう西洋。扱いが
違うから当然かもしれないが、紫外線が、漆を変質させて
しまうのに気付いたのは西洋人が先のよう。変質した
漆は本来水に対する耐性が強いはずなのに、水に溶け
出してしまう。

水という物質は修復において、もっとも基本のクリーニングの
溶剤である。蜘蛛の糞は恐らく温かい水で、あっという間に
溶けてしまうだろう。埃も取れる。しかし、漆面に対しても
損害を与えることになる。そのため、他のクリーニング溶剤
の一つ、White Spirits(パラフィンの一種)を使うことになる。
これに、洗剤(専用の物)を混ぜて、ちまちまと仕事が進む。

誰か、劣化した漆面の一番良いクリーニング方法知りませんか??

Blog1

2007/12/11

Victorian その1

「ヴィクトリアン」

一般に、ヴィクトリアンの家具といえば、1837年から1901年までの
ヴィクトリア女王の統治した期間に作られた物を言うのだろう。
デザインの観点から見ると、ここからここまでって具合には区切る
ことが出来ないので、スタイルの関連性が続くその前後10年ぐらい
がヴィクトリアンの物といえるのだろうか。

この時代は、イギリスにとって栄光の時代である。ヨーロッパ制覇を
目論むナポレオンをワーテルローの戦いで撃破し、一時は
ウィーン体制で他のヨーロッパ諸国と協調したものの、独自の道を
進み、産業革命を経たイギリスは世界の工場として君臨する。

家具産業でも蒸気を使った機械が発明され、1845年には
自動彫刻器が登場。世界の富が集中し、俗に言う家具を買える
中産階級が増加、家具への需要も多様化の道へ進む。自由な気風
のリージェンシーの時代から一転して、保守的は風潮になった
初期のヴィクトリア時代。インテリアも過去へ戻れ、ということで
ゴシック、ジャコビアン、エリザベシアンなどの重い感じの家具が
流行り始める。ピュージン(A.W.Pugin)の国会議事堂の設計、
デザインはその良い例。

その風潮を一転させたのが1851年、ロンドンの万国博覧会。世界中
から集まった様々な物が、家具史上、時代と絶えず密接な関係に
あったスタイルを、グシャっと寄せ集め、現代のような何でもありの
折衷主義を産出して行く。

ホゾ組みがダボ組みに変わり、廉価な家具が生産される多く一方、
そのアンチテーゼとしての手仕事の復興としてのアーツ・アンド・
クラフツ(Arts and Crafts)運動が推進される。

その2に続く

2007/11/08

家具はどのくらいもつ??

素朴な疑問、、、、。

「家具はどのぐらい持つんだろう?」

俗にアンティーク家具と呼ばれるもので、
よくオークションやディーラーの所で見られるのは
せいぜい16世紀の物ぐらいから。

仮にこれを椅子に限定してみる。

しかし、本当に王様が座る椅子を除けば、今の形の
椅子になったのはほんの、ここ400年ぐらい。
それ以前は、基本的にスツールと呼ばれる背もたれ
無しの物。そこから背ずりがついて、今の形になる。

その頃の素材といえばオークが主。しかし、まだ糊は
使わず、ホゾ組みにペグ。流行がウォルナットに変わり、
マホガニーに変わるが構造的には、ホゾ組みに膠で
の接着。場所によっては螺子を使うが、基本的には
稀。ただし、ウォルナットの木は、虫に食われやすい
せいで、あまり座れる状態の物が残っていないのが
現実。マホガニーはしっかりした木なので、乱暴に使用
されない限りは大丈夫。

そう考えると、木の椅子はしっかりメンテされる限りは
いつまでも使えることになる。大概は膠が50年ほどで
結晶化し粘着力が無くなるので、その度に綺麗にして
また接着してあげれば良い訳で、何と経済的な!!

そう椅子が壊れる原因の、主要因は人間側にあるという
ことを肝に銘じておかなければいけない。

ただし、これはしっかり作られたホゾ組み(ダボ組みでは
ない)の椅子に限る。

2007/11/05

Chippendale's Director

18世紀の英国で一番著名な家具作家兼デザイナー兼ショップ・
オーナー、その他諸々であった、トーマス・チッペンデールが
著した本が通称ディレクター、正式には"The Gentleman and
Cabinet-Maker Director"である。

この本が故に、一躍彼の名がその時代のスタイルにまで名を
冠してしまうぐらいである。1754年に発行されたこの本、当時
2ポンド8シリング。トップの家具職人が週に3~4ポンド稼ぐ時代、
かなり高価だったことが伺えます。

310人の購読者のリストが巻頭に示されています。大半は
パトロンである貴族連中、あとはこの本のタイトルにもなって
いるとおり、家具作家の連中。ギロー、セダン、インスなどの
この時代の著名家具作家が名を連ねています。

巻頭のタイトルページにもある通り、一番エレガントで使い勝手
の良い家庭の家具、ゴシックスタイル、シノワズリースタイル
(中国趣味)、モダンスタイル(今ではロココスタイルと呼ぶ)を
めざし、ありとあらゆる家具デザインを包括した初めての本で
あった為、ヨーロッパ中、引いては当時の植民地アメリカまで
大きな影響を及ぼします。

1760年頃には、早くもフィラデルフィアで、アメリカン・チッペン
デール・スタイルの家具が作られています。ヨーロッパでは、
貿易上取引のあったポルトガル、スペイン。北欧のデンマークや
ノルウェー。フランスを除く大部分のヨーロッパにまで広がった
このデザイン。その当時ロンドン、パリがデザインの中心地で
あったことが想像出来ます。

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2007/10/07

Ormolu

これはオルモルと読む。
一般に家具付いている金色の装飾金具はこう呼んだりする。

英語なのかフランス語なのか、ちょっと悩むこの言葉。

実は、日本語のカタカナ英語と同じで、英語のカタカナ仏語。

もともとは、フランス語の"or"(金)と"moulu"(粉末の、
打ちのめされた)からの造語。だから、フランス人には
基本的には通じない英語の単語です。

一般にオルモルと聞くと鋳造したブロンズにファイア・ギルディング
で金箔張りをしたものと思いがち。しかし、これはフランス式の
方法。これは"Bronze Dore"(ギルト・ブロンズ)と呼ばれる。

イギリスで呼ぶオルモルは真鍮に似て、銅と鉛との合金、
しかし分量が違うらしい。そして。金箔は上に張らず、その物
自体を磨いた物。

だから厳密に言うと、オルモルと、ギルト・ブロンズは違う物
ということになる。が、商業的にはごちゃ混ぜに使っているのが
現実。

写真:ギルト・ブロンズの取手や鍵穴(エスカッチョン)。
    フランス、ルイ14世時代のコモド(Commode)から。

Blog2

2007/10/02

Boulle Marquetry2

しかし、この技法、ブール・マルケトリーと一般に呼ばれ、
アンドレ=シャルル=ブールの名に由来しているが、
そもそもはイタリアで発明され、ドイツで発展し、
フランスに到来している。

今でもそうだが、昔からドイツは工具の国。
良い鉄が取れ、鍛鉄の技術が優れていた為、
良い糸鋸の歯が作ることが出来た。
良い糸鋸(Fret Saw)がない限り絶対に作れない。

そしてフランスでルイ14世のお抱えの家具職人だったブール
が、その技法を広めた。時代はちょうどベルサイユ宮殿が
出来、フランスがヨーロッパでまだ力があった頃。彼の名を
冠したマルケトリーで装飾された家具は、他の国の貴族から
垂涎の的だったに違いない。

その後流行は廃れるが、19世紀にまたリバイバルが起こる。
まさしく流行は繰り返すである。

Blog2

2007/09/29

Boulle Marquetry1

マルケトリーの技法の中に、ブール・マルケトリーと
呼ばれる物がある。

簡単に言ってしまえば、普通のマルケトリーは木を
薄く切ったベニアを使うのに対し、ブール・マルケトリー
は、金属板や他のオーガニックの物質を使う。

一番有名なのは、真鍮と鼈甲。

それ以外に、ピューターやアイボリー、ラピス・ラズリ
等の準貴石等が使われる。

捨てベニア、真鍮、鼈甲、捨てベニアの順で張り重ねた
物を糸鋸で切る。真鍮に鼈甲のバックグラウンドと鼈甲に
真鍮のバックグラウンドの物が出来、それぞれを、
プレミア・パティ、コントラ・パティと呼ぶ。

両者は大概厚さが違うため、修復の際、張り合わすのに
苦労する。裏に付いている古い膠を取り除くと沈んでしまったり
するのが厄介。いちいちジグを作って全体をプレスしない
といけない。

続く、、、、

写真は18世紀フランスのブール・マルケトリーの時計

Blog1

2007/09/21

Marquetry

Blog2

 マルケトリー、日本語にはない言葉。
 象嵌という言葉はあるが、こちらはインレイという
 言葉の訳語の方があっている。

 マルケトリーには、2種類の製作法がある。

1つ目は、様々なベニア(薄板)を膠で重ねて接着した物にデザイン画
を書き、それに沿って糸鋸で切っていく、ばらばらにした後、ぬるま湯に
入れて、膠を溶かし、個々のベニアの切った物の取り出し、花びらは
薄い色、バックグラウンドは濃い色と組み合わせていく。それを躯体に
接着すれば完成。

2つ目は、躯体にバックグラウンドのベニアをあらかじめ張っておいて、
そこに花びらなら花びらのデザインをナイフで切り込んで他のベニアで
作った花びらを入れていくという方法。

どちらにしても手間が掛かる。

写真は17世紀後半頃ののマルケトリー・キャビネット。
恐らくオランダ製。

2007/09/19

Gilding

今、ギルディングをやっている。

個人的には、ギルディングをするのは好きなのだが、
新品の物に金箔張っている訳ではないので、
張った後に、周りに合わせて、トーン・ダウン(エージング?)
しなきゃいけないのが悲しい。

ウサギの皮から取った糊(ウォーター・ギルディング)を使うのと、
テレピン油ベースの糊(オイル・ギルディング)とギルディングには
2通りの方法がある。外や、天井などにしてあるものは大概
オイル・ベースの物。家具では結構両方使う。一つの家具に
両方が混在する物も珍しくない。

張った後、バチッと色が決まった時はかなり嬉しい。

恐らく、19世紀の北ヨーロッパのコンソール・テーブル。

Blog1