偽装「ウサギ膠」⁇
Fake " Rabbit Skin Glue" ??
2週間前に、読売新聞オンラインで見た記事、文化財の接着剤で原料「偽装」、
「ウサギ膠」なのにウシやブタ検出…業者「信じがたい」。東京の国立西洋美
術館が市販の膠を成分分析したところ、表示と違う動物種が原料に使われてい
るという事が判明したという。
さらに、一週間前には同じ読売新聞オンラインで追加の記事、「ウサギ膠」な
のにウシやブタ検出、日本に輸出の欧州業者「純正品はもう流通してい「ない」。
他のメディア(転載ニュースサイトは除く)では、報じられていないので、読売新
聞のスクープ記事なのかなと思うのだが、修復に関わる者として興味深いなあと
思い一次資料である元の国立西洋美術館の分析結果の類を調べてみたのだが、公
にWeb上でどこにも見つからなった。
日本語で言う「ウサギ膠」、こちらでは「ラビット・スキン・グルー」と呼ぶ。
ウサギの皮から取られた膠の一般総称。西洋では、主にジェッソと呼ばれる下地
を作るのに使われる。木製品の金箔張り前の目止めの為の下地を作ったり、油絵
の素キャンバスへ保護の為に塗布したりする。ウサギ膠はゼラチンのゼリー強度
が高い為、薄いガラスのような塗膜を作るので表面の保護だけでなく、金箔張り
の下地をガラスの様につるつるして金箔を張ると金属の様に仕上げることが出来
る。
ラビット・スキン・グルーの成分表を確認すると大概はゼラチンとしか表記され
ていない。だから、個人的には100%とか純正とか言葉がない限りは、混ぜ物が
あっても驚くことはない。家具修復で言えば、ハイド・グルーと呼ばれる普通の
膠はあまりにも不純物が少なくて使いずらいと感じる。昔は、膠は動物の皮や骨
を大きな鍋でぐつぐつ煮込んでゼラチン質を抽出するため、必ず不純物が混入し、
それが、匂いや色、固まるまでの時間に影響を及ぼす。それが、今では多分だが
工場で作るようになり、昔のような不純物はあまり入ってないのではないかと思
う。それ故に、色が特徴的であるウサギ膠に若干混ぜ物をしても、さほど影響が
でないのだろう。西洋では、そもそも油絵の下地材としてはほとんど使われない
と思うので、基本金箔張りの下地としてのみの需要。そう考えると妥当な選択で
はないかと思うのだが。
そもそも、ニッチな修復業界。さらにウサギ膠にどれだけ需要があるかと考える
と商業的に採算がとれる物でもない。日本に入ってくる輸入品だって、日本の
販売者は商社的側面もあって、需要とコストを見て買ってきているはず。ネット
上には100%ウサギ皮から取った膠を販売と謳う業者がいくつも見つかる。ただ、
販売者がそこから入れないのは単純に採算が取れないからと考えるべきだろう。
スペインなどではいまだウサギは常食で肉屋で売られている物、はたや日本でウ
サギを食べる人がどれだけいるか。さらに、動物の死骸などを扱う人たちは、忌
み嫌われ差別を受けてきた歴史があるので文化庁が本当にこれは由々しき問題だ
と思うのなら相当の予算を突っ込まない限りは、この問題は是正できないと思う
けど。最後の藝大の教授のコメント「ウサギ膠はもう流通していない、、、」と
いうのは、井の中の蛙的な発想で、閉鎖的だなあと感じてしまった。
記事にも出て来るニッピさんのコラーゲンからの動物種判定法のレポートは面白
かったのが唯一の救いか。「レポート」